ページビューメ-ター

2012年10月4日木曜日

エカルテ城の幽霊









1

クラークがポタージュのスープをすくいながらきいた。
「あれ、あいつどうした?ザールは」
ザフラ妃が返答した。
「お兄様なら、帰ったわよ」
「ああ、…そうか」



その夜、寝室で寝ていたクラークは気配を感じた。
目を開けると、まさかりがふってきた。

グ……グ…オ!

「クッ!」
とっさによけてベットから意図的に落ちた。枕もとに立てかけてある、ホーリーランスをとろうとした。
(女……女の幽霊…)
しかし、つかんだのはホーリーランスではなく、ビームライフランスだった。
「薬の抜けたホーリーランスより、こっちの方が効果あるか!?」

ドカ!

幽霊の影に突き立てると、影は薄くなって消えた。
ビームライフランスは、電磁ソードといえ、切れ味の鈍そうな刃が最初からついている。 電源を入れると、トウルルルルーとほのかな赤いレイザーの輪が灯る。

微妙に部屋が明るくなると幽霊は光に弱いのか、でてこなかった。
「ふー」
電源を切ると。クラークは気配をまた感じた。
「!」
天上に女の子の黒い影が映っている。
クラークは槍を天井についた。
ドス!
黒い影から静かに赤い血が伝ってクラークの顔に落ちた。

「うおおお?血だ」
影はニタ―と笑ったように見える。
もういちど電源を入れ突きまくった。
陰ながらかすかに手ごたえを感じる。
スガ
(どうだ…!?)
ドッと血の雨が降ったように感じ、影も気配も消えた。


2

翌日、エドガーとその話をした。
「まちがいない。以前話した、赤い棺の幽霊に違いあるまい」
「俺が成仏させる。今夜カタコームにいく」
「場所は隠された地図に載ってるという。隠し部屋から通路があるという伝承だ」
「ま、昼は仕事があるからな」


クラークは国王の事務室にいき。
エカルテの年鑑を読んだ。
(のってる。隠し部屋だ。図書室から…)

それから、ニュースサイトを閲覧した。
SNSをみるとアルフレットがカプセル太陽発電を宇宙に浮かべて畑を実らせたと、書き込みがあった。
(カプセル太陽発電か…)
電磁クラブに連絡をとり、連中にきくと、すぐ作れるという。


200
四つの円盤をつなぐ、ニュートラルブリッジの建築のうちあわせに会議室にいった。
建築会社の人間からは、順調に進められていると報告を受けた。
(順調って…どのくらい順調なんだべ)だが口にしなかった。
それから、エカルテの国庫からいくらマネーを出すのか決めてくれと言われた。半年に何口かだ。
(まずいな。工事が複数あって、金がたりね)
エドガーをつつくと、国宝をいくつか担保に金を借りるかと言われた。
あとから買い戻せるという。
(上がりが元取れないと質に流されるな。モノホンの国王が帰ってきたら気まずいじゃすまないしな)
気弱に1クラウン、60ジャム出すことにした。

(計画もっと練り直すか…)


夜、クラークはホーリーランスとビームライフランスの二挺、担いで図書室におとずれた。
腕には青白のこてをつけてガードしている。
(ここか…)

ありがちだが本棚をずらすと下に降りる階段があらわれた。
鍵はなかった。

………

カタコームはかなり広いつくりで、クラークは息をのんだ。
「きれいな広間だけど…鼻をつくような薬くさいというか化粧くさい、きついデザインの地下墓地だな」
バラの花の絵だが死に化粧の面持ちのある絵がずらーっとならんでいる。
何重もの輪のように、中央の棺を囲んでいろんな飾りが囲んでいる。
「伝承の通り、赤い石の棺だな」


どこから水を引いているのか、ごく浅くて細い堀にすんだ水が流れて囲んでいる。チョロチョロと気の鎮まる流れる音を奏でている。

(アルフレットと違うタイプのオーラを感じるぞ!黒い死者のオーラだ!)
怖さが厳かな気持ちをクラークに与える。
「神聖な墓を暴く気分だな。エジプトのピラミットなら紀元前4000年とかで幽霊も時効って感じだけどな。生きている死者の墓とかナマモノでグロいな…」

クラークは恐怖を押し殺して、ホーリーランスの棍で赤い石の棺の蓋を、一気にずらした。

ガガガガァ
黒い煙が辺りを包んだ。
クラークは思わず毒ガスを吸わないかのように口を覆った。
(うぅ!?)
カッ!
女の幽霊が横たわった姿勢のまま宙に浮く。
グオーン!



3


クラークは震えそうになるのをしずめ、勇気を奮い起した。
「こっちには、薬の抜けかけたゾンビキラーと現代版ゾンビキラーの二挺あるんだからな!
そう怒鳴って槍を突きつけた。
幽霊は空中でたてにおきあがった。

ドン
クラークはいきなりすごい力で壁にたたきつけられた。

「ぐっ……安物のブロックならへこんでクッションになってくれるんだろうが…飾りが厳かな割に固い壁だな! 腰が折れそうに痛いぞ」

よろめきながら、おきあがると、ホーリーランスを投げつけた。
ガッ
かすかに手ごたえがある。
が、黒い煙になり、とおりぬける。

どす黒い死者のオーラがクラークを襲う。
クラークはビームライフランスを逆さにし、砲口を向け撃った。
ガー
熱線がほとばしる!

やはり敵に手ごたえがある。敵のオーラの粒子とバッティングするらしい。

「やった。ダメージがある」

槍の刃の電源を入れ、ビームが灯る。
トルルルッルー
刃の周りにレーザーの輪が3つ現れた。

クラークは夢中で斬りつけた。
ザザザ
黒い霧を吸い込んだ。
クラークの頭はホラー映画のような恐怖映像につつまれた。
死者の苦痛が体に流れる。
「く、くそっ!」
クラークはしびれてきた。
体の自由がきかない。
風邪をひいて体育の授業をこなしている生徒のようだった。
槍を迂闊に落とした。
首を絞められているのに気づいた。
「おおおお、苦しい」
クラークは拳をめちゃくちゃに突き出した。
「うおおおお!」

黒い霧になったり実態の死体になったりする幽霊にダメージがある。
精神力の勝負だった。

幽霊の死体は、こんどは自分が壁にたたきつけられた。
間髪入れず、クラークはダッシュして、蹴りをくらわせようとした。
ちゃっかりホーリーランスをひろった。
が、黒い煙は薄い霧になって四散した。

ホリーランスを楯に構え、クラークは念仏を唱えた。
「牧師の心」


霧は棺にもどり、自然とふたが閉まった。
朝日が階段の上からさすのが見えた。

クラークはドアをとじ、カタコームからでた。
扉に札を貼り、封印した。

その日は昼まで寝室で寝た。



4

午後300
エドガーと談話室でクラークは相談した。
クラークは葉巻を吸った。
「そうさ、成仏はしなかったさ。けど、奴の怨念も10年は静まったさ」
「牧師をよんで、図書室で祈祷をしよう」
「ああ、それがいい…」

祈祷は2日後に決まった。

クラークは王の事務室でSNSフェイスコインを閲覧した。
「パーカー達はもどってくるのか…ダゴンがひいたのか。ふーん。ザールは、雷鳥をとらえに登山か…自信家だな…なに、『妻にレポートをおくりたいものはこの私を通してほしい』あー、燃えてるな、あいつ。

幽霊のことは書かないさ。ああいうのは広めると罰あたりさ。描かない方が成仏するもんさ。あいつらが帰ってきたら話す…」

ザフラ妃がコーヒーを淹れてきた。
「ああ、くるなよ。いや、いいさ」
クラークは幽霊のことを話した。
「わたしも、祈祷に参加するわ」
そういって帰っていった。

ニュースを見ると、ニュートラルブリッジの工事現場の映像が映っている。

次の日、エカルテ専用エアポートの工事現場にクラークは差し入れの飲み物をもっていった。
そして、カプセル発電機を工事途中の板から、手づから浮かべた。
「雲の上にのったら落ちそうだぜ」
「浮かぶだけで落ちませんよ。無重力ですから」
「ながされるぜ」

板から海に遊泳するようだった。
ひもでくくった8個のカプセル発電機を適度に並べ、クラークはもどってきた。
「ああ、充電されて、水がガスになったら、こうやってひもで引き寄せてな」
ひもを引くと球体がぞろぞろ手繰りよる。

「差し入れの飲み物´´好きなの選べよ。コーヒーからコーラ、炭酸、スポド」


祈祷の日、そとは天気雨だった。

牧師は祈りの言葉を唱え、黙とうした。
「死は神のもとへ行く旅立ちなれば…死にゆく友を憐れむなかれ。アーメン」
一同は手を合わせ祈った。
クラークとエドガーはエカルテ・コインの年鑑にこのことを記録すると、図書室の元の書架にもどした。

0 件のコメント:

コメントを投稿