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2012年10月30日火曜日

覇者の世界





覇者の世界




1

クラークのエカルテ軍と、ラグナクロク軍は勝利をおさめた。
ガオンの編隊を駆逐し、平和が戻った。


ブロームインでは、国王がエカルテのクラークのもとにいる娘のザフラにメッセージをおくろうとしていた。

国王が文章を読み上げる。
ザールと書記がかたわらできいている。

「ザフラ、エカルテに滞在しているようだが、クラーク王の妃になる気のようで、それは結構なことだと思っている。
ただ、国王とは孤独な任務だ。
おまえが、国民に“あなたたちと違うのよ”と背を向け、クラーク王に対しても“失脚が怖い”と背を向けるなら、おまえは上がった階段で、降りることも登ることもできないで、一人怯えるだろう。
王とはたくさんの人の中にいるようで、たった一人の孤独な立場だ。
勘違いしているが、王の妃など簡単にいくものではない。
ただ、夫の見方をしないで、その他大勢の見方をするくらいなら、初めから王の妻の座に座ることは許さん。
そうなったとき、わしは、おまえを育てた責任として、お前の首をとるだろう。
兄は元より、父であるわしを裏切るのは許されるがクラーク王を裏切るのは許されない。そのことを心に書き留めろ!
肩身の狭い時おまえをいたわるのはクラーク王以外にいないのだ。
その逆も……。
ただ、うまい酒が飲みたいがために王の妻になるなら、奴隷より心根の卑しいものだとわしは思う。
もしそうなら、今すぐブロームインに帰ってきて、書記官か兵隊の一人の嫁になれ。それが父としての最後の命令だ」

(ザフラ……)ザールはおもわず、息をのんだ。


2

アルフレットは時の女神にいった。
「こんな奴ら相手にしてたら、アウトセーバーがへし折れそうだけど…自慢のバリアもガレージ(車庫)みたいにぺしゃんこにされそうだ」

「異界から来たつわもののそなたたちでも不可能か」

「ただ、この太陽の胸飾りを試してみたいな…まえにつかったらえらいことになったんだけど」

「やむをえん」

「責任はあなたがとってくれるなら!?」
「永遠に時が止まったままよりは…」
「よしきた!!」



3


クラークはエカルテ城の広間の王座に座っていた。
「いや、この城に王座なんてあったんだな。しらなかったぞ。いまどき国王なんてCEOみたいに事務室かとおもった。入り浸るぞ俺」
エドガーと猫人間が立って控えている。
「手違いで長い間教えなかった。申し訳ない。エカルテの文化だ。ほかの国に王座なんてあるのか」
長靴をはいた猫人間は秘書か何かだろうとクラークは思った。
「ガオンとの戦争に勝利しましたが…どうします?ラグナクロクでパーティにまねかれてますが」
「敬意を表して自分で来いってな。冗談だ。ラグナクロクにいってみたかったんだ」
「それじゃ、ザフラ王女とわたしが付き人で一緒にいくよう、返事だしときますよ」
「そういやおまえ誰だ?猫人間なんだな。まえ虎男見たけどな」
「あっしはただの秘書ですよ…それでどうします?これからなにをしまょうか…」
「そうだな。工事も待つだけだし…」
「ラグナクロクに…聞いたことがありますか…王女様がいますがね」
「ああ、きいたことあるな…どんな国だ」
3年くらい前滞在したことがありますが、メカにこる機械いじりの国ですが。からくりが好きなようで」
「ふーん」
「それと…ですがね。2か月ほどでエカルテコインの建国記念祭りがありますが、勝戦祝いのあとにまた祭りで…」
「招かれるんなら、ただだけどな。国王になったら自腹の気分だし…うちの国はニュースで『おめでとう』でいいな」
「さいですか」
「それと、勝戦記念の余韻でそのまま建国祝いまでつっ走れるな」
「なるほど」
「故郷の地球でな…子供のころクリスマスとかあるんだが。寒くなるころから、いろいろ盛り上げるんだな商店街とかおもちゃ屋さんとか、レストランとかショーウィンドウとかな。クリスマスって12月からなら2425日で終わるけど、クリスマス勝戦のやつらもっと余韻で引き延ばすんだ。お祭り気分を」
「それじゃ、地味に雰囲気を引きのばして余韻を建国祭りにもっていきやしょう。それと、TVで勝戦祝いを手配します」
「いいな、おまえ。俺、事務室行かないで、おまえ転がして仕事進めたくなるぞ」
「よしてください」



4

アルフレットは懐から、太陽のむな飾りをとりだした。

ジャラ…

「合図したら時を動かして下さい」
女神はうなずいた。
アルフレットが念じるとペンダントは輝きだした。

イブリースがいった。
「すごいオーラだ!共鳴してるが?なにに!!

太陽の50倍もの質量の白色矮星が落ちてきた。

ZUOOMMMM

あたりは灼熱の高温の世界になる。
「今だ…!時を…」
女神が止められた世界の時間を動かしだした。

カッ!

熱しかない世界で剣を振りかぶった戦士が争いだした。
二つの軍隊は止められた、当時そのまま、戦争を始めた。
すさまじい争いだった。

アルフレットが両拳をぶつけて、はなすと、アウトセーバーを右手に握っていた。

イブリースは片手を上にあげると、頭上から半円の刀が落ちてきた。
円を半分に切って、円周ぜんぶが刃になっており、直径の部分二か所にグリップがついてる。

二人は戦乱の渦の中にとびこんだ。

アルフレットはアウトセーバーにオーラを全開でとびかかる。
軍隊どちらも遠慮なくぶっ放した。
ドン!
ザア!
ガン!
イブリーズも全開の呪文を唱えて、高熱の上にさらなる爆発を巻きおこした。

それでも軍隊の人数は計り知れない。
つぎつぎ、剣、槍、斧、弓矢、銃、魔法、計りしれない攻撃が飛び交う。
アルフレットは力尽きるまでオーラをぶっぱなしつづけた。
「おおおおおおおお。アウストラセーバー!!」

一発で兵士の数人がひしゃげてもげた。
が、こんどは相手の攻撃が弓矢のように飛んでくる。
「おおおお、アウストロガード」
さすがのガードでも、何割か突きぬける。



5

ラグナクロクは単純そうだがビジュアルなデザインの建物の国だった。
ミニカーにのって、会場に向かう。
クラークはいった。
「なんか白黒のような建物の形だな」


会場でラグナクロク国王とあった。
「ガオンとの防衛、お互い頑張りました。おめでとうございます」
50代くらいだろうか。人のよさそうな賢そうな、そんな感じの男性だった。
「飲み物をどうぞ」
「ああ´´、きれいな器です」
「美しい陶芸品にこってます」
クラークとザフラは飲んだが、おいしかった。
「あれ、おまえは飲まないのか?」
長靴をはいた猫が答えた。
「猫人間なんで酒はいらないですよ。それより王女様が来ましたよ。挨拶、ホラ」

王女は質素な服装だった。
「ああ´、はじめまして。大神ゼウスがきりはなした、もう片割れのあなたに早く会いますように」
「ありがとうございます。クラーク王…」

猫にクラークは訊いた。
「ああ、故郷じゃ、こうあいさつするんだ。こっちじゃダメか?」
「エジオンでしょうか…コインメタトリーでも同じあいさつがありますが…。古いですけどね」
ザフラがいった。
「結婚前の女性のための挨拶ね」

ラグナクロク国王がまた来た。
「クラークさん。どうです、こっちの器で飲んだら」
「ああ´´、どうも」
てずから、別の美しいポットから注ぎ始める。
そのとき、インスタントメカがギッコンギッコンいいながらきた。
≪やあ、クラークさん。そうかたくならないで≫
「ああ、エカルテの前国王の…」
「ハハハ、アーリーリタイヤして、このざまです」
そう奥から声がした。とエカルテの前国王がきた。手にコントローラをもって遊んでる。
「すっかり、ラグナクロクでお世話になってます」
「大臣でも?」
「いや、観光ですな」

そのあと、ラグナクロクの国王がこってるという、妙な楽器の演奏をきかされた。
国王みずから演奏している。
イスがならんで、かんたんに、かこんでいるが、まばらだ。

ザフラが小声でいった。
「なんだか、肩がこるわね」
「まあな」



6


アルフレットがアウトセーバーをおおぶりでふりまわす。
「おおおおお、あああああ」
敵兵も斧をアルフレットにたたきこむ。
「どあああああ!!」
アルフレットはガードしても、顔面に喰らい、血が飛び散る。
生身の人間だったら、それどころじゃなく、頭がい骨が砕けているだろう。


地震が起きた。
大地が振動している。
あとすこしで、地割れが走る。
アルフレットもイブリーズもそう直感した。
(タイムリミットか…)


ガオン勝戦祝いは、人数の少ないパーティだった。
ラグナクロク国王はいった。
「軍人はこの国ではパートジョブでして、ロボットをリモコンで操作して戦います。だから職業軍人は少数で、兵器も民間企業がほかのアイテムのついでに開発してます」
クラークは返事した。
「なるほど…」
「催し物より、コインをくばるほうが、パートジョブの軍人には喜ばれる。アルバイトですからな。団結心とかはない。この国では軍隊のそれは時代錯誤とおもわれる」

「そうかあ…」

「トップが少人数でなんでもこじんまりしてます。そのかわりバラバラの組織は数と種類が多い。それぞれがコネクトを持って働いている」
「人手がいらないから、少人数の集団が無数にあるんですな」
前エカルテ王がいった。

「ああ、…」

「小規模企業で潤わない団体はパートジョブで資金を集める。そしてそれを活用してビジネスを戦うのですな。すこしまえ下請として、仕事をもらってきた企業が、もう幅を利かせているとかよくあります。学生の実習の半分は起業です」
「そんなものですか。パートでも賃金が高いとか´´」
「それなりに…人件費ですから。ロボットには賃金がない」

王女とザフラはおしゃべりをして、ぺちゃくちゃしゃべってる。

猫人間の秘書は、チーズをつまんでいる。

クラークはトイレに行きたくなり、「失礼」と階段を下りた。

「たぶんこれさ´´」
トイレらしきドアをあけると、
建物の室内に噴水がある。
「え?」
鳥がさえずっている。
「あー酔っぱらったか?聞いたことのある鳴き声だ。ナイチンゲールとかか……」

宝石のようなつららが下がり、なんと食えるフルーツがぶらさがっている。
クラークはふらふらとバナナをとって食べた。
みると女性が立っている。しかも微笑んでいる。

「あ、あの、室内に水が…いや噴水が…」
「わたしは大神ジォヴェのつかいのもの。この青銅の水をあなたに…」
小瓶のガラスに青い液体が入ってる。
思わずクラークはカリ(青酸カリ)かと、怯えた。
「あなたの、ホーリーランスにふりかけると、聖なる力がまた元の威力に戻ります」
「ジォヴェ?へへー」


きがつくと、ただのトイレのまえにたっていた。


7


すごい振動と雷、そして女神がおこす硝酸と塩酸の混じる王水の嵐がこの世界そのものを壊し始めた。

煙にまかれて、最初はぼーっとみえた、図体のでかい巨人。
大扉の巨人と互角の背丈か。

相面の巨人だった。
顔の後ろにもう一つ顔がある。
しかも、老人のような、けわしい表情で戦神の類であることは容易に見て取れた。
手には剣の柄の側にも刃がある巨大な相刀(そうとう)を握り締めている。

ズアアアアア

戦争の兵士たちは、どちらの側も待機の姿勢で戦いをやめた。
イブリースがいった。
「どうやら我々があのヤヌス神を倒せばおとなしくするようだ」

地震により地割れがおこり、大地が割れた。
天念のリングができた。

「あそこが、墓地になるのかね…」
アルフレットはアウトセーバーを杖のように片手でささえにして、つぶやいた。



8


クラークは王座に入り浸った。
長靴をはいた猫がいう。

「エアポートもニュートラルブリッジも特に異状ありやせん」
「そうか。なんかお前いると安心するな。秘書だからな」
「いっとくけど、難しい問題はわかりませんよ。責任持てませんからね」

エドガーがやってきた。
「クラーク王…どうですか。問題はないですか」
「おお、エドガー。とりあえず平和なのかな。今日は終日ここですごすぞ」
秘書猫がいう。
「明日から事務室で自分でチェックしたほうがいいですよ」

クラークは“青銅の水”をみせて、夕べの話をした。
エドガーがいった。
「ジォヴェ神…?聞いたことがないですが」
「ああ、ゴールド・ウィンであばれた巨人がいってたさ。俺は金縛りのように動けなかった。そこまで偉い人にはじめてあった」
秘書猫がいった。
「最強クラスの次元の神でしょうかね。この世界をおつくりになって去ったという…」


その夜、クラークはホーリーランスに「青銅の水」をふりかけた。

「おおお、ものすごい聖なるエネルギーだ!!

みるとランスはあきらかにパワーアップしている。
「デラックスにパワーアップしてる…」

クラークは投げてみると、
ハンマーのように飛んでいき、ブーメランの用に戻ってくる。
「キャッチのとき刃があぶないぞ…」



9

クラークはいじっているうちにランスの刃が引っ込むのに気づいた。
ジャコン

折りたたむ木工細工みたいに、でたりはいったりする。
ジャゴ・ガシャ・ジャキン

「おお、ハンマー(鎚)になる…こっちいじると、斧になった。」

ホーリーランスはハンマー(鎚)にもなり、戦斧にもなり、槍にもなる。

「バタフライナイフみたいだな。ホーリー・スリー・モーニングスター、とよぼう」



アルフレットは地割れでできた、リングにジャンプしてとびのった。
「マンガなんか読者になれば、毎週楽しみに読める。読みたくなければとじればいい。自分がマンガの登場人物になると、戦いたくないとき辛いんだ。そのかわりマンガがタダで読めるんだ」





アウトセーバーは物騒な刃の頑丈な剣で、特殊な能力は特にない。
でかさと斬れあじだけが取り柄で、オーラをつかえるアルフレットが全開で剣にのせても、壊れない。

相面の巨人にとびかかる。
「おおおお」

(クラーク………女は男がいないと宴の火を起こせない。だからといって謀にかけてまで男に火を強要する女がいるよな……。
興味があるんだ、男にしかできない文明の炎…
だが、宴は仲のいい人とするもので、ふだん痩せ我慢しない奴が、やっても楽しくないんだ。
“愛がないんだ”
何かいわれると復讐する。うわばみのようにどん欲な女。
女はおなかの子供と二人分だ。だから欲があってもいいんだ。
だが、火が欲しいといって自分で火を消してる女……
愛の炎は、苦痛なんだ。
相手の男の負担を考えないいたわる心のない。自分さえよければいいバカ女……
動物としての苦痛はともかく、人間としての心の苦労がすくないんだ。人間さぼるな!
パーカー…新米のサラリーマンなんか安月給でおこられてばかりだ。
ベテランはなれて、多く稼げるだろ。
愛なんて、人間の心の苦労を知らない新米には楽しみなんかじゃない。苦痛なんだ。セラ
愛の炎で焼け焦げる。
人にゆずることを覚えていない。
ただ、えさを喰らおうとするだけの動物だ。
男のいうことを聞けない。すぐ口返し、男のせいにする。
それは人間としての苦労を知らない。文明人じゃないからさ。
だから、男の気持ちがわからない。
はらがたつとやりかえす。
むさぼれば幸せという。セラ
心の傷なんて、ありがたい勲章だと思えるくらいじゃないとない。
それで実際は体に傷をつくり、勲章だと吠える。心の傷がないのをプライドを保ったとのたまう…セラ
この巨人は愛がある…
それを感じる。
男なら…自分が悪いを感じたら口を返さない。
老人のように険しい…戦神、バカ女と違い人間としての苦悩をしっている
だから…戦っていて…あたたかいんだ!
心が傷だらけの戦士だからだ。
闘ってきた者だけが持つ優しさだ。
いたわりを知る者…!)

アルフレットは笑っていた。

(あと数秒後に…全開のアウストロクロスを使う…!)



クラークは王座で波動を感じていた。
(アルフレット…おめー)
10


「アウストロクロス!」
「アウトセーバー!」
「おおおおお」

アルフレットは顔面血だらけでほほ笑みながら、オーラ全開で斬りかかる。

相面の巨人はニャと笑う。

「動物は…動物の苦労は、喰われないよう逃げ回る。怪我や病気になすすべがない。人間は医療により克服できるが、動物は死を免れない。人間のような娯楽がない。
人間は文明の力により、衣食住を安定できる。娯楽がある。酒、音楽、火。
医学があり、肉体的病を回復できる。時代が未来になれば、肉体労働、単純作業から解放されてゆく。しかし、人としての苦しみに耐えねばならなくなる。頭脳労働、学校の勉強、統率、高次元の人間精神から来る苦悩。
孤独、悩み。
動物は苦悩したりしない。


人と仲良くする、ゆずる気持ち。
それを会得する苦労。

人間が高度の文明世界で生きられるものと、サル、あるいはもっと原始的な動物からやり直した方が良いもの、そのまま人間。
分けられる時が来たのだ。
それと、悪人。
頭の悪い悪人は、イブリースの下のペストで満ちた汚れた空気の地獄へ、能力の高い悪人は、イブリースの監督する煉獄へ……」


巨人は武器をかまえた。
ニヤと笑う。
「手加減せんぞ…、人間は文明を克服できるか!?」
「さあね…、たばこのポイ捨てをしたことがあるが、ぼくはシンガポールだか、マレーシアじゃ犯罪人だ。ぼくは、この世界の法律書を見たことがないんでね」

カッ!



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