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2014年9月7日日曜日

異空間小説 女神になった少女 サラ


異空間小説 なっ サラ

 1

― 宇宙は無限なれど、そこに実存するものはなし。

なじかなら、五感を通してその存在を感じる

人間の精神が到達せずならば、無とひとしきと考えよ。

ならば、無限の宇宙は無限に無が広がるのみ。

時間もまた、人間精神の存在とともに生まれ、

人間精神の滅亡と同時にその役割を終える。―

書物を閉じたサラは窓の外を見た。

日が沈みかけ、夕日がさしていた。

「伯父さまの研究室は相変わらず、意味のわからない本しかないわ。

書庫に行って、物語を読もうか…」

サラが後ろを向いたとき、伯父が研究室にはいってきた。

「サラ、またここにいたのか。もうすぐ日が沈むね。

ここを出なさい。ああそうだ、サラはいくつになった?」

「今年で9歳になるわ、伯父さま」

「お前くらいの年の女の子が面白いものはここにはないだろう。

食堂に行って柑橘類を食べるか、お母さんのところに行っておいで」





その日は朝から薄暗かった。

(雨だわ…雷が鳴りそう)

サラは伯父に気づかれないよう研究室のドアを開けると

そうっと忍び込んだ。

伯父は肘掛椅子に座り、机に向って何かを読んでいる。

夢中になっているらしく、自分に気がつかない。

― 時空は流れる川の如くにあらず。

静止した水面のようにただ静かにそこにある。

精神が風を帆に受けて移動するがごとく、時空を移動するが如し ―
「伯父さま!」

「サラか」

「伯父さまはまた難しい本を読んで…。

伯父さまは恋をしたことがおありになるの?」

「はは…、おまえの父さんとお母さんのようにかい?」



― 今はすぐ過ぎ去って、たちまち過去になると人は言う。

しかし、さにあらず。精神が時空と接する点は、

それを現在という。そして、精神は常に時空を泳ぐものなり。

さすれば、かつての地点は常に過去となる。

精神は今、接する時空を今という。

ならば、精神は今しか感じることができぬことは当然の帰結なり。

 精神物理学 第二巻 完 ―
「伯父さま。この不思議な書物の続きは?」

「精神物理学の一巻は私が知ることしか書いてなかった。

だから買わなかった。

第三巻は高くて買えなかった」

「どこで買ったの?」

「異空間の大魔道士と名乗る者からだ」

「どんな人?」

「はは…、おとぎ話に出てくる魔法使いにそっくりだった。

風変りな衣装を着ていた。

私は大切なものと引き換えにこの書物を買った」

「大切なものって?」

「ははは…あれは本当に高かった。

第三巻を買うことができたらと今でも思う反面、

買わなくてよかったとも思う」

「サラもこのお話の続きを読んでみたいわ」

「面白いのかい?」

「よくわからないけど、高くて買えないのなら、

サラがこのお話の続きを完成させてみせるわ。いつか。」



「ゼノンの矢というのがある。

ある瞬間、矢は一か所にいるわけだから、矢は止まっている。

飛んでいる矢なのに、ある瞬間では動けない。動いていない」

「矢は時空にふくまれるんでしょう。

時空は止まっているから、動かなくくてもいいんじゃないの」

「同じ位置に止まっている矢は?区別がつかなくないかい」

そのとき二人を呼ぶ声が聞こえた。

「天気がいいから外でお昼にしましょう。ふたりとも」


 
 
大学生になったサラは、久し振りに故郷に帰ってきた。

「わかったわ。伯父さま、ゼノンの矢のことが」

夕食の後サラは伯父の研究室に入ってきた。

「運動している矢は静止している矢より短く見えるのよ。

静止しているゼノンの矢というのは精神が見た場合にのみ静止している。

実際は時空で運動しているという情報と位置情報の両方を保持している。

ある瞬間、矢が静止しているというのはみている人の心の中の絵なのよ。

でも動く矢と静止している矢では

心の絵では長さが違うから区別がつくのよ。

紙に記号で動いているという印と位置の印は簡単に書けるわ」




サラは大学のカレッジの裏庭で、恋人のアーサーと二人で寝ころんでいた。

「幸せだなあ。この幸せが永遠に続きますように!」

突然、低いような、それでいて甲高いような男の声が響いた。

「残念ですが、幸福な今が永遠に続けば、

あなたは幸福を感じなくなるでしょう。

あなたの頭脳は学習をしています」

おとぎ話に出てくる、魔法使いの格好をした。巨人のような大男がいた。

サラは心のどこかで、子供のころ伯父の話に出てきた

異空間の魔道士だときづいていた。

「幸福に頭が慣れて、幸福だと感じなくなるんでしょう。

どうすれば、永遠に幸せでいられるの?」

サラは大魔道士にたずねた。

「永遠に同じ環境で幸福を感じるかわり、

あなたは物覚えの悪い、愚鈍な頭になるでしょう。

したがって、地位も名誉もなく、収入の乏しい人生になるでしょう」

大魔道士は答えた。

「それなら、安息で平和でいられますように!」

サラは願った。

「安息がつづけばあなたは悦びを感じなくなるでしょう。

苦痛の刺激があなたの意志を呼び覚まし、

悦びや愉しみを感じる心にするからです」

大魔道士は答えた。

「いじわるね」

「この世界は意地悪なほど気が利いているのです」

「それなら幸福な人生になりますように!」

サラはいった。

「幸福になるために人は生きるのではなく、

幸福にきづくために人は生きるのです」

in the ヘブン

 
 
「この世界の物理法則が気に入らないというのなら

メイ・シンクレアの『ヘブン』のように

自分の考え通りの世界に行けばいいのよ。

そこには、自分と同じ考え方の人たちが集まっている。

おおよその枠があるなかで。

死んだ後生まれ変わる世界が望ましい世界ならヘブンといい、

望まぬ世界ならヘルというのだと思うわ。

人と人のルールは変えられるけど、

物理法則は変えられない。

魂にいたってはヘブンもヘルも法則が変わらないのだと思うわ」

サラは友人のエリザにいった。

エリザは答えた。

「サラ、あなたのヘブンは?」



ビジネスガール

 
大学を卒業して5年。

サラはコンピュータ会社の部長となっていた。

大学5年生のとき、伯父からコンピュータを買ってもらい、

それで、興味を持った。

サラの会社の社長が、モニターからCPUからプログラムまで0から

すべて一人で作り、販売し、コンピュータ会社を起業した。



 
japanese荻原(おぎわら)!!会議の資料はまだ!?

サラは歩いている部下を呼び止めたずねる。

「はい、でも、プリンタの調子がおかしくて」

「プリンタがおかしいときは、

マシンのここをおもいっきり足で蹴るの!!はいこれでOK!

「すぐに印刷します」

パニックになりわけのわらないことをサラに叫ぶ部下がいる。

「部長、これじゃ投資銀行以上に忙しいです」

サラは適当に返事をする。

「そうね。でも、口より手を動かしなさい!!

また、誰かが叫ぶ。

「コンピュータ会社なのになんで

会社のコンピュータは4年も昔のなんですか部長!?

これじゃ、はかどりません」

サラは答える

「売り上げが伸びるまで我慢しなさい!!

仕事がトロイのコンピュータのせいにしないで」







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