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2011年3月19日土曜日

かぶき坊主 その一「ガマの油」

かぶき坊主


その一「ガマの油」



かぶき坊主が町を歩いていると、サムライが町人に刀を自慢していた。

「拙者の刀は斬れぬものはない名刀でござる。

たとえばそこの松の木など、一刀両断。チェースト」

松の木は幹から切れ、道のわきに吹っ飛んだ。

サムライが言うには「拙者はこの刀でも斬れぬ物を探しているでござるよ」

かぶき坊主が言うには「お侍さん。このガマガエルは斬れるかい」

サムライが言うには「お安い御用。無益な殺生ごめん」

サムライは刀でガマガエルを斬ろうとしたが、ヌルンと油で滑り、斬れなかった。

サムライが言うには「今一度、ごめん」

ヌルン。

またしても、油で滑り、斬れなかった。

「むう。ガマの油。今回は引き分けとしておくでござるよ」

サムライは家に帰り刀をぬぐったが、油がとれない。

「あのかぶき坊主のおかげで恥をかいたうえに、

刀を一本駄目にしてしまった。だだではおくまい」


次の日。サムライはかぶき坊主を訪ねた。

「かぶき坊主。そなたのおかげで生き恥をさらし、刀をダメにした。

この償いとしてそなたの右腕一本頂戴いたす」

サムライは脇差を抜き、かぶき坊主の右腕を切り落とした。

「チェースト。右腕一本ごめんいたした。

これに懲りて、かぶき加減を改めるでござるよ」

かぶき坊主が言うには「お侍さん。脇差一本じゃ、たかが知れているね」

かぶき坊主はガマの油を塗ると右腕はもとどうりくっついた。

サムライが言うには「むう。ガマの油。侮れないようでござる。

今回は引き分けにしておくでござるよ。では、ごめん」

かぶき坊主が言うには

「お侍さん。ガマの油が着ものに着いたよ。神通力“火炎発破”」

サムライは黒こげになって家に帰った。


おしまい

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