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2011年3月19日土曜日

かぶき坊主 その三 『血も凍る刀、冷酒 前篇』

かぶき坊主 


その三 「血も凍る刀、冷酒 前篇」





殿様「お主も悪よのう」

越後屋「上様こそ」

殿様「いやいや、お主こそ」

越後屋「いやいや、上様こそ」



サムライ「……と上様と越後屋が話していたでござる。

かぶき坊主殿、これは何やらよからぬ悪だくみの匂いがするでござる」

かぶき坊主「匂いがするどころじゃなくてそれそのものでしょ」

用心棒「なんでまた、わざわざサムライ殿の前でそんな話をするでござる?」

サムライ「さむらい言葉をマネするなでござる」

用心棒「拙者はサムライでも忍びでもなく用心棒でござる」

かぶき坊主「それで、なんでお侍さんの前でそんなやり取りをしたのさ?」

サムライ「上様が言うには、誰かが観ていないとやっても意味がないそうでござる。

いわゆる時代劇のお約束らしいでござるよ」

かぶき坊主「なるほど、間者も誰もいないとやってもむなしいよね」

サムライ「そこで、二人に密偵として、上様と越後屋を調べ上げてほしいのでござる」

用心棒「しかし、その会話だけで十分証拠になるのでは」

かぶき坊主「状況証拠にしかならないよ。ただのジョークだと言われたらお終いだ」

サムライ「それだけではなく二人に上様の愛刀『満月』を盗んできてほしいでござる」

かぶき坊主「やめたほうがいいよ。

お侍さんの愛刀『冷酒(ひやざけ)』はもう油がとれたんだろ」

サムライ「これからは二刀流の時代でござる」



つづく


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