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2013年10月24日木曜日

Another War ―もうひとつの戦争―  第二部












AnotherWar  ―もうひとつの戦争― 

第二部



Another War  ―もうひとつの戦争― 











Another War もうひとつの戦争 | monstar.fmAnother War もうひとつの戦争
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2013年6月リリース
Tr1.ライトフレームランチャー
Tr2.スペ-スヒーロー
Tr3.オーバーランス





















★☆★★


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■□

































1



セルウィウスが親善調査団の「おかえし」にと時空警察のエリアに派遣されてきた。

ジュールの統括する軍の演習を見学している。
戦争中ならないが見学のため、あるいは親善が目的なので船の中の映像をセルウィウスがモニターで見ている。

相手をしているのはマンデンブルー大佐だ。

セルウィウスに楽にするよう促し、解説する。
「軍事演習のための仮編成の一個団体をジュールが指揮して動かしている」
セルウィウスはかるくうなずく。

「全軍とまれー!!」
ジュールが珍しいかのように大声を張り上げる。
左翼右翼、そして後方を支援する軍艦が止まる。

ジュールの指揮下にいるのは仮編成だが、時空警察のつわもの達。
特別防衛隊であれば、まちがいなくランクAのスペシャルソルジャーたちだった。

母船-:アルキポ 左翼-:ヴィクター 右翼-:フォルトナト 後方尾翼-:メラネウス

「仮想標的!キングダゴン10体!右翼フォルトナト 迎撃準備!」
≪わかった。了解!小惑星を撃てばいいんだな!?ボゾン砲スタンバイ≫

セルウィウスは目ざとく悟っていった。
「顔見知り程度か見たことのない相手。それが直接の部下になっている…」
「…」
マンデンブルー大佐は沈黙していた。
「さらに下の部下は彼らに任せるとして、任務だけあるいはネームバリューでしたがっている。時空警察のジュールの威光でね」
「練習途上の仮編成だからね」
「軍の組織全体がサポートしていれば話は別ですが…」セルウィウスは眉をぴくんともちあげる。
「ジュール個人の力で編隊を動かす訓練だ。これは…すると話が変わってくる。最初は訓練だからそういうもので指示を聞いているが、なめられると自分の方が上だといってくる。そういう連中だ。猛者ぞろいの優秀なメンバーだとそうなる」
「よくわかるね」

「彼(ジュール)の気張り方を見ればわかります」

「ボゾン砲発射!!」フォルトナトが命令する。

右翼の戦艦からボゾン砲が発射され、小惑星はピンポイントで崩れ去る。

「よーし」ジュールが汗をかいている。



2


ジュールが声を張り上げる。
喉がからからにはりついている。
それでも声を絞って出さないと呑まれてしまう。

「よし、これだけの艦隊に一斉に銃口を向けられると相手は戦意を喪失する。鎮圧するが撃墜はない」
戦意を喪失させ降伏に持ち込む。
省エネで戦闘を終わらせるすべだ。
ジュールは片手を水平に持ち上げて静止のサインを送る。

母船のアルキポは宇宙船の操縦席から後ろで立ってマイクで指揮しているジュールをうかがった。
(こいつがジュールか…)

フォルトナトがいった。
「どうせなら、一斉砲撃とか見せ場をつくりたかったぜ」

セルウィウスはマンデンブルー大佐にいった。
「これだけの艦隊と猛者をひきいるんだ。腰ぬけでなくても緊張してガタガタいう」
フフンと楽しそうに笑う。

「うちの艦隊の波動砲だが、率直にどう思われる!?」
「気を悪くなさらないなら、無遠慮ながらいいますけどね。軽いですよ。うちの軍艦のものに比べると。型が古いのかも」
「型が古いか…」

セルウィウスはイスを引いて殺風景な会議室でどさっともたれかかった。
「自分の我をはるだけの我がままだけだと、集団は争うだけの集まりになる。かといって聞き分けがいいだけだとなめられる。だれも正確な公式を解いたものはいない。そうでしょう!?自分の言いたいことだけ言っていると人望がうせて暴発を招く。説得力を磨くなんて口だけじゃできませんからね。疲労しますよ」
「…統率不可能な人間はどんな因数分解でも解ける計算機でもまとめられない。組織を追放される。それがなくてまとまりのある集団は不可能だ」
「イカの脳みその連中はどうやっても無理なんですよ。秩序なんていらないんですから。孤独から学習することは山ほどあります。誰のせいでもない。おっと大佐…でしたよね。こんなところであなたと仲良くなっても仕方ない」
ケチくさそうにセルウィウスは不遜な態度と礼儀正しさのあいまいな態度をとる。
「ジュールが軍艦から着陸してこっちにくる」

セルウィウスは無言で殺風景な会議室を見まわす。
自分たち二人しかいない。
セルウィウスは身軽に授業参観の気分だった。
自分たちの統率エリアにいると、無言で休みなく仕事をしているのと変わらない。
そこが、ジュールとの違いだった。
手ぶらという、今の職務につく以前の環境。
腕が軽くていつもの二倍の力でエアロソードをふるえそうだった。




3



演習の船は着陸にむかい、そこまでとなっていった。

セルウィウスがつれてきた帝国の連中は違う個所を見学していた。
イスに居眠りでもするように座り込んでいたが、そのままの格好でしゃべりだす。
「…人間、誰でもどこかの個所を我慢して生きている。だが、全部を我慢して生きている人はいない。金持ちは金を稼ぐのに苦労をするが、金を使うのに苦労したりはしない。あの猛者たちは、自分より下の人間に従いたくないかもしれないが、弱音を吐くのを我慢して生きる」
「ふむ」

「まったく何も我慢しないで生きていたい人間はもはや、人間不可能だ。世話になっているのに、自分が被害者だといいだす人間は軟体生物ですよ。まあ、持ちつ持たれつに正式に取り分など決まってませんがね。自分の取り分、力の入れどころが違うから仕方ないくらいに考えられる人間が国家にどのくらいいるかでしょうか」

セルウィウスはイスから立ち上がって伸びをした。

「戦力になる人間か…」
「人材は大事です」
「現実と向き合える人間…」

そのとき会議室のドアが開き、ジュールが戦闘服のままはいってきた。
「なんの話…?」

セルウィウスはジュールを見てぴくんと眉をもちあげ、口に笑みを浮かべた。

ジュールはいった。
「自分が強いときに他人に痛いことをすると時間を置いて自分に帰って来るんだよ」




4



アルキポが時空警察のコーヒールームでたむろしている。

装備は制服にドラゴンソード、ラジオコントロールパンチ。
彼はデカポリスの出身で、今回召集されてきた。まだ20代の隊員だ。

「あれがジュールか…あとちょっとで“誰よこいつ”っていうとこだったぞ」
暫定的に母船のトップをまかされたが、デカポリスでの勤務では階級は同僚のものたちだった。

「金髪だけどあまり背はバカ高くないな。お前より少し高いくらいだ」
仲間の隊員がいう。

アルキポがいった。
「だけど時空警察なんて砂上の楼閣みたいにいちばん上に誰がいるのかわからないほど巨大な組織だな。あのフォルトナトとかはじめてみたぞ」
「砂上の楼閣じゃない。カフカの城とかみたいだろ!?だけどおれもそう思うな。自分の近辺にいるやつしか知らないし、話題になるやつもいるけど、いちばん上の人間なんてTVでも紹介されないだろ」
「誰がやっているのかわからない不思議な組織だ」
アルキポがいう。
「だろ、ジュールとかあいつらよりまだ上に行くと、一体どんな奴がでてくるんだ!?最果てまでいくと」
「おまえより強いのかよ、あいつら」
「バカ、俺なんかデカポリスの剣といわれるくらい精鋭なんだぞ、簡単にやられるか、お前らみたいに。でもな、統率力でジュールと張り合いたくないな。あいつのほうが上だろ。戦闘なら五分で行けるか。フォルトナトとかヴィクターってやつらでかくて猛烈に強そうだぞ。統率ならオレは三番くらい、戦闘なら二番くらいだろうな」
「あれはな、極悪隊長って感じだ」
「でも、ジュールってあのわかさで編隊の指揮官が務まるのかよ」

アルキポが即答した。
「コインのエカルテ王国なんかクラークっていう30代の人が国王やっているんだぞ。若くてもそんな奴たくさんいるぞ。オレには無理だけどな」

アルキポがオレンジだとしたら、レモンのような色違いのそっくりさんやバナナに位置するレモンと同じ黄色の時空警察隊員もいるらしい。

「そういや、俺の愛車どうなった」
備え付けのノート型パソコンで工場でチューンナップされている愛車を確認した。
「高かったんだぞ、オートコントロールカー改造してマシンガンとか戦闘補助機能入れたんだ」
「町中走れなくなるぞ」
「大人しいから大丈夫だ。警察ですっていえば走れる」




5


会議室のモニターに時空警察の隊員が映った。
≪大佐!帝国グラウディウスからセルウィウス殿に通信があります。接続いたしますか?≫
マンデンブルー大佐はセルウィウスをみた。
セルウィウスは首をかしげた。
「はて?なんでしょう。わざわざ。心労がたまりますが…お願いします」

モニターがチェンジして帝国からの通信が回信されてきた。
セルウィウスのところのNo.2らしき小男が映る。

ジュールは思った。
(彼は…)

「なにがあったスノピオ…」
≪百人隊もお終いだね。なにがあったも、本部中の本部からの伝令だよ。アルアロリア妃のことでもどったら話を聞くからアルキメデスまで来るようにいいつかった。そのことを時空警察領にいる間に報告すること。私がだよ。アルアロリア妃について簡単に解説すること。要点を得た調書をまとめるため、気を張って視察することと厳しく念を押されたよ≫
「…わかった」
≪くれぐれもよろしく頼むよ≫

「…クラウディウス帝はアルキメデスにいるのか…」
セルウィウスの意識は頭の中の記憶に向かい無言になっている。

ジュールがいった。
「…電話がきれてさっそくだけど、アルアロリア王妃って…?」

マンデンブルー大佐がいった。
「それはコロシアムに向かう車のなかできこう」



6



ジュール達は会議室をでてチューブの道路から車に乗って別の場所にあるコロシアムに移動していた。

車は地球の地下鉄のようにクリーンな無音でスピードをあげる。
カーブもチューブのトンネルがなめらかにまがるので滑走するように道を進む。
半透明なので空と下の地面がマップのようにみえたり、ガードがおおって不気味な明かりが照らしだすトンネルを走るようでもある。
TVゲームのレーシングゲームの画面を見ているようなスムーズさだ。


「私もそんな詳しく知りませんが、なにせ現在実権を握っているクラウディウス帝の姪だとか。絶世の美人の誉れ高く、教養から育ちまで完全に違うと…。姿を見たことがないのになぜ絶世の美女とわかるのでしょう…」
セルウィウスがいう。

ジュールが後ろの座席に向かっていった。
「あなたは…あこがれの気持ちとか」
「まさか、私に縁談などあるはずもありませんが。私は別に…、手赤などつけられるような身分ではない完全なる箱入り娘でして」
「そりゃそうか」

コーヒーのサイフォンか化学実験の装置のようにくるくる螺線に回るチューブで下降する。


コロシアムで特等席が用意されていた。
ライトな飲み物がおいてあり、シンプルな設備だ。
三人で席を占める。

みると、はじまったのは、さっきの隊員フォルトナトの戦闘だった。

スカイウィングスーツに身を包み、手にはアラビアンアクスを握っている。
対戦相手はモンスターだ。

トラックマンモス 一体

ビックなマンモスだ。体中からかたそうな毛を毛むくじゃらに生やしている。
切れ味のよい名刀でも毛の固さと油にまどわされて、皮膚を傷つけられない。

長身のフォルトナトは斧を投げつけた!と同時に走る。
「ブルーモンキー!!」

セルウィウスは鼻の下をこすりながら見ている。

重鋼の斧はトラックマンモスの毛皮のガードをやぶり皮膚を傷つけた。
ややおくれて、その斧をキャッチ!
カーターの技の斧版のようだった。

キャッチのあと回転するように背後からシュートをきめる。

31005678!!!!

トラック並みの大きさのマンモスがドサッと倒れる。

ジュールがいった。
「どう?戦ってみたい彼と…」
セルウィウスはいった。
「ごめんですね。首がもげますよ。アラビアンアクス…いくらですか?帝国にはデンジャラスアクスっていうのがありますがね。いや、若者言葉で失礼…」

コロシアム中から歓声が上がる。

「いいぞー、もっと技を見せろー!!」




7


タナトス・パレス・ホテル。
コロシアムの見学からまたチューブの道路をとおって送りとどけられた。

「今日はここに泊まってもらうから」
「どうも。それと他の部下たちは?」
「このホテルで合流するはずだ。しばらくするとくるだろう」
「そりゃどうも」

壁の質感に工夫がある。
もこもこ半立体になっている。
壁は見るだけでデザインかもしれないが、ドアの取っ手はさわり心地に力を入れて工夫してある。
触ったとたんハッと目が覚める。
気分がよくなるのである。

「高級なつくりで…空気が落ち着いてます」
ジュールが解説しはじめた。
「ホテル業って自殺されると非常に困るんだよ。お祓いだけじゃなくて、料金安くしたりとか、イメージ悪くなるだろ。それで自殺防止のおまじないが各所にあるんだ」
「ホウ…」
「スイカの崩れたようなアートなんか、あれを見て自殺を止めるんだよ」
「なあるほど…それは」
「それと銀行直結のホテルだ。タナトス・パレス・ホテルは…時空銀行と繋がっている」

彫刻が壁になり、自分がどこにいるのか行方不明になりそうだった。

ジュールがポツといった。
「夕食はカレー。楽しみにしててよ」



8


カレー専門ハウスの階にセルウィウスはつれていかれた。
「これは、ハーブ?っていうのでしようか、薬味やスパイスの匂いが…」

あたりに立ち込める。
サウナとかアロマのような匂いだ。

「何種類もの薬草やらハーブで煮込んだ特製だよ。よく知らないけど」ジュールはそういう。「じゃ、ここで明日はヴィクターの弁論をみてもらうよ。それと退屈だったらこのフロアにシアタールームがある。無料でどうぞ。ルームキーのカードに無料クーポンが入っている」
「それは、また、いたせりで」

トマトを濃くしたような、トマトの茎のような香りが鼻につく。
それとコショウ?なんかの匂いで太鼓をたたいたような活発な気分になる。
セルウィウスは腹が減っているのに気がついた。



9


カレーの神経が高ぶる香辛料と煮込んだハーブの香りをかいでいると、さっきのモンスターと戦闘していた戦士の勇士を鼓舞する気持ちになりそうだった。

みるとメニューに「首狩り族のカレー」「軍人カレー」「デリシャスカレー」「ハヤシライス」…
などとあった。

食後にパインジュースがでた。

セルウィウスはカレー専門店をでると廊下つたいにあるいてみた。
『コインバスケット』
『シアタールーム』
『タナトス浴場』

カードをみると浴場のクーポンもある。
なかにはいってみた。

畑の土のにおいに間違うほどハーブのきいた風が流れてくる。
ローマの公衆浴場にも似た広い風呂だった。
湯気が襲いかかってくるようにこっちに来る。
誰も人がいないようだった。


翌日、室内のシャワーをあびて、白いガウンをきていると、ボーイがノックする。
モーニングセットを運んできた。

サンドイッチ、やけにきれいにもられたクロワッサン、紅茶のパックとカップ、オレンジジュース、ハムとチーズのかけら。イチゴに練乳がかかっている。
それと新聞の朝刊がついていた。

ボーイは室内の湯沸かしをセットしてでていった。

セルウィウスはお湯をカップにいれ、パックをひたすと朝刊をひろげた。
(メガロポリスの新聞…)

メッセージカードがみえた。
広げて見ると、〈午前830にロビーに来て下さい。予定道理案内します。あなたの部下には別途案内がいきますので心配いりません。おまちしております〉と書かれていた。
そのころ…
アルフレットとアルセウスが時空警察領のビーナスにきていた。

「なんだ?コインバスケット!?」
ビーナスの白銀の街にも同じものがあった。

はいると狭い廊下のようなつくりでバスケのゴールがついている。
カードマネーを自動装置に入れて金を払うと、コインが10枚ほど出てきた。
「コイン一枚につきボール一個だ」

コインを入れて見ると、バスケボールがでてくる。

ノイズ系のサウンドがなりだし、電子音声のアナウンスがかかる。
男の太い声で電子的にしわがれている。
≪この狭い廊下のような一本道でバスケか!?実際のバスケなんて敵が5人、味方5人。しかもサッカーと違ってハーフに全員10名集まる!?その狭さはこんなもんじゃない。一人か二人でこんな広さならOKだ。さあ、得点を奪え≫
そういってサウンドがガシヤンガシャンなりだす。

「みていろ、アルセウス」
アルフレットがアルセウスをよけるようにシュートを打つ!
だが、デフェンスをかわしたため、横にフォームが流れている!
「必殺ストロボ!」
流れたぶんだけ、アルフレットは計算してボールをシュートしていた。
「あのトールの得意技か…!!」

バス!
見事入った。
ゲームセンターのように音が鳴ってチカチカうるさい。
「消そう。僕たちは」
そういって操作した。
パンチングマシンのようにやわらかいクッションがついている。

「私にもダンクができるか」
アルセウスは真下からフックのようにダンクを決めようとした。
ガツン!リングに衝突する。
「ああ」

ボーリングのようにゴール下の体育館でいう段のような部分にボールが落ちると回収されてそれまでだ。
「なに!?坂になってないか」
シュートがゴールのボードの裏にはいって自動販売機のように落ちた。
「ああ、またボールが」
吸いこまれるように落ちていく。




10



タナトス・パレス・ホテルの朝はやる気に満ちていた。
朝から仕事の人も、新聞を広げている人、ガラス張りの喫煙室で葉巻をふかしている人、それぞれバラバラのようでいて、目的に向かう朝の心意気がそろっている。

スーツを着込んだビジネスウーマンみたいなひとも鞄をもって何か話している。
キビキビしたムードが朝のやるきを増長させていく。

目が何かを追っている。株価なのかニュースなのか。鷲や鷹が鋭い眼をしているかのようだった。
タイプライターのカシャカシャいう音もリズミカルに聞こえる。

まだ800にならないくらいだ。
やがて15分ほどしてジュールとマンデンブルー大佐がやってきた。


タナトス・パレス・ホテルの中にヴィクターの弁論の会場があった。
エレベーターにのりつく。
「ああ、まだ早すぎるよ10時からだ」
マンデンブルー大佐は喫煙室にいった。

ジュールはセルウィウスにいった。
「どうする!?適当に時間つぶしてくる!?」
「一時間半でしょう?」
セルウィウスは案外黙っていても居心地がいいので機嫌がよかった。

「歌舞伎役者なんかの首をぐるぐる回すしぐさ。あれって思ったんだけど、変身ヒーローが変身するのと何かが共通な気がして」

セルウィウスはいきなり身を乗り出した。
「スモウレスラーがやるとおもしろいですね」

会場ではひとが準備でガヤガヤしている。
聴講の客もパラパラ来る。

940ころからあいさつがはじまり、ヴィクターの弁論がスタートした。
ほかにも講演やらなにやらあった。


国の政策、方向、法律の立法などの思弁を語る。
民衆や議会を動かすには弁論の技術が大切であった。
わかりやすく伝えるのか、熱意を持つのか?それぞれの技法であった。

また、意見を発表するだけで責任は生じないという考え方と、発表した時点である責任を負うという考えも両方存在した。
それも弁論者が考えることであった。

当のヴィクター自身、学者のように研究者として意見を述べているのか、政治家、国王の候補者として、トップにいずれなるもののとして述べているのか?はっきりと意識していなかった。

どちらかというと時空警察の上級職者の習慣によっていた。
ある意味、刀剣の試合のように競技のように考えている節も大であった。
私利私欲ではなく大勢の将来を考え、面白いアイデアなどもよろこばれるが、気軽な話でもない。かといってつまらないだけなら社会はやはり沈没してしまう。
ユニークさと新鮮さも船の上のライムのようだが、基盤をしっかりとネジのしめた方法を考える。


休憩で会場が明るくなった。
マンデンブルー大佐とセルウィウスが会話している。

「編隊を組むと、片方が折れたとき痛いですよ。鎧を着こんだものが徒党を組んで威張るんですから、周りをおしのけるんですよ、嫌でも。編隊が弱まったとき、周りから急激に圧力の渦が来る…」

ジュールは会場の外に出た。



11


アルアロリア妃が侍女に髪をすいてもらっている。
「誰にも会う人がいなくて退屈な生活ですけど…」
侍女はいう。
「それは重い身分の方には仕方のないことですわ。アルアロリア様は何も心配するものはない…」

「グラウディウス帝国はおおきな戦争をするつもりじゃないかと心配するわね」
「…お耳にそんな話が…わたしにはわかりませんけど、私なら上の人々にお任せして安心しておりますわ」
「そうだけど…女の私の心配など役に立たぬでしょうか」

もう一人の侍女が入ってくる。
「アルアロリア様…クラウディウス帝がおよびになっております。直々にアルキメデスのクリスタルタワー最上階の専用喫茶室に来るようにと…」



そこではクラウディウス帝がまっていた。
ボディガードが各所に配備されている。
飲み物を注文する。
「伯父上…わたくしは帝国は時空警察と親善にむかうのが正しいことだと感じております」
「…アルアロリア。お前のいうことは正論だ。だが現実とはそううまくいかないこともある」

話はアルアロリアの縁談だった。
セルウィウスの報告書をたよりに時空警察のファイターとアルアロリアを結婚させる計画だった。
基本、この場合、お互い不可侵条約に近い。

この段階では帝の頭にはジュール、ヴィクター、フォルトナトの三名が花婿候補となっていた。
アルキポは20代でまだ若いと除外されていた。


このときアルアロリア22歳。













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