■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
Another
War ―もうひとつの戦争―
第四部
Another
War ―もうひとつの戦争―
1
休日。アルキポが自宅のソファで横になってマンガを読んでいた。
「そろそろインターネットでもめくってみるか…」
おきあがろうとしたところ、インターフォンが鳴った。
でると、弟がきている。
「あぁ!?」
ドアを開ける。
「おまえ!?何しに来たのよ。まさか時空警察に入隊させろとかいうのか!?それに、いつの間にでかくなったのよ、190以上ありそうだぞ」
【アルキポ(弟)191cm78kg】
「違う、時空警察は大組織で嫌だ」
「あぁん!?」
「オレは小規模の騎兵とかに向いている。ナイトだ」
2
時空警察 幹部エリア
ヴィクターが真顔であるいている。
通路の曲がり角にきたとき、不意に人が飛び込んできた。
ボフ
冗談半分にヴィクターのみぞにボディブローをいれてかかえこむ。
殺気があまりにないので、気が抜けてそのまま体でうけとめてしまった。
「なんだよ、ジュール…おまえ、アハハハ」
「こんちわ。あいさつがわりだよ」
ブロンドの髪を揺らしながら、子供のようにいう。
そして、少し真面目な顔をしていった。
「それにしても、大丈夫かい?あのアルアロリア妃って相当なお嬢様だよ。国士無双とか呼ばれてうぬぼれている田舎侍に旦那様がつとまるのかい!?じかにこの目で大都会、グラウディウス帝国を見てきたから忠告できるけど、時空警察のデカポリスやメガロポリスなんかド田舎の範疇だよ」
「脅かすな、なんとか前向きに生きている…」
「それと」
「!?」
「あの軍事演習のときにいたアルキポ…」
「ああ、あの若い…」
「彼は要注意人物だよ」
「そうかい」
「実はある筋からの情報だと…大神の化身だとか」
「大神ジォヴェの!?なんだよそりゃ」
「大神自らが人の姿を取って飛来したとの目撃情報がある」
「実在するか不明の次元の違う世界の神だぞ」
「それだよ、アルキポの不思議な特質…実際目撃されたわけじゃないけど、頭がこよなくいいのに、バカなんだよ。わざとだよ」
はたしてアルキポの正体は大神ジォヴェが人の姿をとったものなのか…
3
時空警察
ヴィクターが重装備の鎧を着てテレポートマシンに乗り込もうとしている。
ジュールがかけ声をかける。
「ヴィクター、君のフィアンセは3分の2が女神だ。しっかり戦って来い」
ヴィクターは背中に雷様の太鼓のような装置を背負っている。
実は回転する剣の鞘のような装置で手に取りたい剣を定位置に回転してもってくる。
フオン…
独自の回転音を発して旋回する。
「オレの母はオレが20歳くらいのとき、見た目少し上の姉くらいで自分と大して違わなかったな…さすがのオレも首を傾げたぞ。まわりの奴らに恥ずかしかったな。それにしても基礎体力が違う母だった。オレはお袋にきたえられているからな」
ジュールは無言で軽くうなずく
ヴィクターは剣を抜いた。
「ハイパワードソード…開発するのに苦労した。いずれ大量生産して売りに出す…」
みると太身(ふとみ)の剣の刀身に地球の信号機のライトのように大きな丸いLEDライトが三つついている。
チカチカ点滅してコンピュータが何か思考しているような雰囲気を出す。
ヴンヴンヴンヴオン
ジュールがたずねる。「これ、刀身に刃がないようだけど」
即座に答えが返ってきた。
「無論…刃できるのではなく高圧のエネルギーで粉砕する」
「今はやりのエネルギー剣か…」
刀身のランプが意味深な点滅をする。
「ソフトウェアのエンジンが始動した」
トールルルルオオン・オン・オオオン・・・
ハイパワードソードの刀身にエネルギーが集まりだす。
ジュールはいった。
「いってきなよ。強敵だモニターで見ていてぼくたちは援護する」
「ああ、ジュール…じゃあな」
ヴィクターはテレポートマシンに乗り込み。
ジュールが装置を起動する。
「GO」
4
神殿の中は以前の戦いの後がのこっていた。
激しい戦いの爆発の壁や床の焦げたあとや壊れたあと…
前の魔獣の死体は消えていたが、死闘の激しかった様子はそのまま惨事の後のように残されている。
さらに上のフロアに…
ヴィクターはあたりを観察しながら、落ち着いて進んだ。
1~3階と違うデザインだ。
原始林。
そのものではなくアートでそう見せかけている。
ジュラ紀の世界のように原始林と湖の広がる景色。
モンスターが見える。
ショッキングなカラーのステゴザウルス。
半分眠っているかのようすだ。
「これは…色合いの派手さでタフな恐竜に見えるな…アリゲーターの究極形みたいな」
ヴィクターは中空に浮かんで魔獣を見下ろす。
声が聞こえた。
≪太古の時代のドラゴン…原始獣「アイスグリーンザウルス」その背中にならんだ楯はグッドナイトシールド…この破壊力にあらがえるか!?≫
「…眠っているときに体をガードするからか…?背中の棘が」
ヴィクターはハイパワードソードをぬいた。
フォーン・ウウウウン
エンジンが唸る。
「喰らえ」
一太刀ふるう!
高圧のエネルギーが落雷のように原始獣にむかう。
ドガ!バリバリバリ…
9999
ぐうるるるる
いかにも恐竜といった叫び声をあげてアイスグリーンザウルスはおきあがる。
口からドライアイスのシェイクをふきだしてきた。
ご・ごおおおおお
ドッ!!
ヴィクターは鎧のおかげで防ぐことができたが、その威力に吹き飛ばされるところだった。
「強力な冷気!」
978ダメージ
「ジュールだったら…GOTO・ヘル!!と叫んでいるところだが、知性のない動物か…悪賢い、知能の低いふりをしている悪人でないが、倒させてもらう」
もう一撃ふるう。
グ・グウルウウウオン
ドッ!!!?
キンキンキラ
グッドナイトシールドが黒く光る。
ぎゅおおん
ヴィクターの放つ高圧のエネルギーを吸い取るかのようにかき消した。
「これは…真の夜の闇が光撃を飲みこんでしまう。ブラックホールのように」
ヴィクターの直感が直接触れてダメージを与えないとダメだと言っている。
ヴォン
地面に降り距離をちぢめて闘う。
5
上から声が聞こえる
≪地上から天を見えげても、ただ雲間しかみえまい。天の上まで上がってくるか…≫
ヴィクターはハイパワードソードをオンにしてきりつける。
巨大なアイスグリーンザウルスは地面に叩きつけられる。
ぐおおおん、ドシーン!!
9999
原始獣は口から強力な冷気をふきだした。
ガッゴオオオ
ヴィクターは直撃を喰らったが、鎧が反応して冷気を即座に中和した。
だが、勢いで数メートルふきとばされる。
ヴィクターは腰を旋回させてストップした。
鎧についているカメラでみていたジュールはこういった。
「これじゃ、まるでモビルスーツの戦いだよ」
(このまま直接斬り込めば勝てる。数発で…)
ステゴザウルスの巨体だが、全体がスタイリッシュなカラーで最強クラスの恐竜のようにデザインされた原始獣は言葉を発した。
「◆□■それはどうかな…スキーウェアのような鎧をきて、エネルギー砲のような剣を持ったとしても…」
(なに…獣がしゃべった!?)
そのときドリトスの破片。タコの腕が40cmほど宙に浮いたヴィクターの足にからみついてきた。
「ぬおっ!?」
原始獣は攻撃しないでなにかをため込めている。
「!?」
ジュールがマイクを通じていった。
≪気をつけろ、ヴィクター!!なにかくるぞ≫
ドリトスの足をオーラで焼きつくして燃やし捨てた。
「◆□■あせっているな。何が来るのかわからない…お前の心が読めるぞ。パーフェクトボムで一気にカタをつける気だな」
「…オレも読めるぞ。お前の攻撃は無限陣だ。作りだすのに時間がかかるとみた。オレはみたわけではないが…陣に飲み込むモンスターの話を聞いたことがある。そいつは人の心を読むという」
ヴィクターはハイパワードソードを背中の鞘におさめた。
背中の円盤のようなものが回転して止まった。
ヴィクターの心がマイナス思考に占領されそうになる。
すさまじい暴風が吹き荒れる。
だが、それにヴィクターは耐えた。
パーフェクトボムにエネルギーを蓄積するため、精神力を放出し続けている。
一歩間違うとすべてを投げ出したくなる。
「だが…人の心を直に読めるのは…機械だけだ。お前はコンピュータ仕掛けというより…バイオロボット!?あるいは霊的機械とみた」
「■◆◇□…」
「直接、頭の中の思考を読めるのは魂の無いロボットだけだと知っているぞ…」
グオオオオオとアイスグリーンザウルスの無限陣が口から放出された。
フォンフォンフォオンフー
同時にヴィクターのパーフェクトボムが両手から放たれた。
パーフェクトボム
無限陣ごと大爆発に飲み込まれた。
30000!!!
アイスグリーンザウルスは粉々になった。
6
粉々になった死骸がきれいに光るコインになって跳ねまわっている。
しばらくすると消える。
ヴィクターは持って帰ろうとしたときには全部消えていた。
グッドナイトシールドが落ちている。
ブラックとグレーのスタイリッシュな楯だった。
ヴィクターはそれを拾うと装備した。
「ふん…」
ヴィクターはしばらくその場にたたずんでいたが、次の階に向かった。
≪まだ進むのかい?≫
ジュールがマイクを通していう。
「ああ」
さっきまでなかったテレポートポイントがあらわれた。
次のフロアは芸術的な柱が何本も天井を支えている。
ロココ様式とかドーリア式ともちがう。
柱が鏡のようにあたりを映している。
とおもったらTVやコンピュータのモニターのように高尚なテーマの風景などを照らしているとわかった。
そこに待っていたのは暗黒魔人だった。
彼は自分から解説した。
「ようこそ…私は暗黒魔人アンティンエプル。よくぞドリトス、アイスグリーンザウルスを破壊した。そしてだが…さっきのパーフェクトボム。あれはあらゆる性質の爆撃を包括している。だからどんな弱点だろうと焼きつくすのだ」
「…そのとおりだ。すべて網羅しているからパーフェクトボムというのだ。よくわかったな」
「よかろう…。わたしはダブルボディで体をいくつにでも分身できる。ゲームがしたい。そっちも人数を用意しろ。われわれはもしかしたら…一個の偉大な神の分身体でしかないのかもしれないぞ」
ヴィクターはしばらく黙っていたがこういった。
「いいだろう。いったん退却する」
7
マンデンブルー大佐は戻ってきたヴィクターにこういった。
「ナイスな戦闘だった。だが、今度行く時はホワイトグラスを装着していけ」
グルーザー女史とジュールも笑顔で迎えた。
ヴィクターはいった。
「ホワイトグラスは視界を遮るので、いまいちつける気がしなくて…」
壁のモニターには何人もの技術者たちが働いている様子が映っている。
ヴィクターはいった。「時空警察が開発しているニュータイプのコンピュータ・システムの開発は順調ですか!?」
ジュールがいった。
「優秀なエンジニアが日夜努力して開発している。うまくすすんでいるよ」
8
移動要塞アルキメデス
グラウディウス帝はおかかえの宮廷芸術家ロンダルロットを呼び寄せた。
ヴィクターとアルアロリアの結婚式の演出家を一任するためだ。
皇帝はいった。
「どうだ、このたびの仕事。はりあいがあろう」
「ハッ、閣下。このたびの役目をいただき、ありがたく存じております。ですが、たいへん難しい仕事でして。
結婚式とは各地、各文化でしきたりが千差万別でして、花嫁が肌をさらすだけで禁忌とされるところなどいくらでもありますし、段にあがって客席としきってあればよいというところもあります。アラビアンナイトなど通読しきらびやかな宴の催しを研究しておりますが、あまり宴の儀など詳しくは書かれていないようでして…」
「それはあるだろうな。話によると我が帝国は文明は発展しているが道徳が三流とまで酷評されている」
「ハッ、飾り付けも宮廷幾何学者に模様を描かせる予定であります。ドレスなども悪徳として無礼であるとするしきたりも多くありますし、正装であるので良いというところもあります。夫以外に肌をさらす事態になると自害する。王族の妻の気がまえとはそういうものなのであります」
「その意味が分かるものは少数であろうかな。気位の高貴な者の尊い意志」
「ハッ、まことになげかわしくおもっております」
「だが、あまりそんなことをいってはいると、客席に誰も並ばないことにもなるのだ」
「それも頭に入れて企画を練っております。企画書は草稿から膨大なメモの羅列で、ゲーテのファウストを読み、宴の華やかさのアイディアになぜかなるように霊感にうたれ熱意がわきでております。
また、新郎の実費で宴をおこすのならよいが、国や両親に支払いを頼っては凶であるという見解もあれば、国がもつなど、めでたいという考えもあり、複雑多岐にわたっております」
「それも、向こうの使者や新郎側とやりとりして順次決定してゆこう。ゲーテのファウストで思いだすが、国事の結婚式ともなると、一時にいろんなイベントがおこるようであるな」
「それは映画を式の間に大型モニターで宙空のロビーとロビーをつなぐ橋から、3チャンネル中継でがながめるなど、企画だけではありますがプランがございます。複数の芸術家、私と弟子もふくめ、仕事を依頼し多くの飾りを描かせたいと考えております」
「この歳になると、式の席に連なるなど、仕事をさせられているかのように疲れるようになる。あんがいボーィになって客をもてなして見たい気がする」
「ハイ、わたしも客席はごめんでして。だまって催しを眺めるのも窮屈であれば、新米など、キツネにつままれるかのように楽しめますが、経験を積むと仕事をさせられているかのように疲れるのでございます。仕事で給仕などをしますと、仕事もあれば、合間の隙間に宴も見物でき、給与をもらって満足できることもあるのです。さらに、上からしきる立場であれば、楽しめません。すべて自作自演ですから種を知り尽くしている。地位が下の若いものにしたら、あこがれるような大勢に埋もれて夢を見られるのでございます。くれぐれもその両方を得ることは不可能であります。よくばりは肝臓をついばまれることでしょう。わたしなど演出家がてごろにやる気のある立場でして。すべて宮廷芸術家として研究し憶測した事柄を口にしておりますのでどうか寛大なお許しを」
皇帝は企画の第一案をつづった書類を見ていう。
「これなどいい。《人間本当に仲がいい。そうなるのは難しい。仕事であれば利害が、遊びであれば動機の弱さが邪魔をし、つながれない。また、人と人がつながりすぎては不気味である。不衛生であるかのようにさえ見えることさえある。それで人間が孤独にならないよう神がつがいをこしらえた。夫からその妻をつくりだし、つながって問題のない家庭というものを編みめぐらせた》」
「御意」
「おまえひとりで結婚式演出の総責任者はだいじょうぶか?」
「『君主論』のニッコロ・マキアヴェッリは、レオナルド・ダ・ヴィンチのよき相談相手も務めたとかいいます。自分の下にいる部下はもういますが、横にいて同盟者のように、うるさいこと気のきいた指図をしてくれるものを望みます」
アルアロリアは“シンデレラ”の意地悪な姉たちのような役回りの女親類がでてくる予定である。
グラウディウス帝国の貴族、ドルシエラとビョンデッタだ。
物語はおとぎ話のような方向に転換してゆく。
いろんな人が読んで、心底発憤できるような物語が完成されれば、もくろみは成功だ。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□