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2013年12月9日月曜日

紫色の煙 思い出したあのときのこと

昭和小説

第一部となんとなく人格設定が違ってしまう。イメージが違うが、「紫色の煙」の続編が読みたい方用。未完成作品。



紫色の煙 思い出したあのときのこと




1 日曜日


日曜日の夕方、彼女のアパートにぶらりと突然遊びにいった。
昭和55年代の当時、学生も社会人も週休二日制などまだなく、日曜が休みで、土曜日が昼ドンだった。今ではシフト制とかで定年間際で独身の自分もその制度に従っている。学生は秋休みまであるとかないとかいう。
彼女の部屋のTVで相撲を見ていた。
横綱の取り組みが終わり、力士が弓を動かしている。
「もう終わったのか」
「帰るの?ご飯食べていくの?私も明日は学校があるから、突然勝手に来られても困るんだけどな…」
彼女はまだ生きていた。当時。交通事故死する1年ほど前。
煙草に火をつけ帰ろうかどうしようかと考え始める。
やっと気がついたが、珍しく寛大な彼女がいらいらしているように見える。
彼女はアパートで一人暮らしだが、安月給の自分が家賃を払っているわけもなく、学校にいっているので仕事をしていなく。(当時婦人の仕事は限られていたと思う)彼女の両親が家賃を払っている。
「なにかのみたいに、土曜の午後から来るとか、日曜でも早い時間から来ればいいのに、週末の終わりのこんな時間にいきなり来て」
(ふーん。めずらしいな、こんなに怒るの。見た目通りでおとなしいのが売りなのかと思っていたけど。あっ!死相が出ている)
「帰る」といって自分は倒産しかかっているという噂のボーリング場にいくことにした。看板のボーリングの絵は雨水で錆びて落雷が落ちそうな雰囲気がある。


2 ボーリング



ボーリング場で一人で玉を転がしていると、小学生が勝負を挑んできた。
「もう、夜だぞ、帰らなくていいのか」
「おっさんこそ、自分の心配しろよ。それより、割り勘というより、年上が支払えよな」
ひと勝負終えた後、ケーキを夜半まで営業している喫茶店で御馳走した。
「坊主、夜にケーキ食べるとバカになるから、親にはいうなよ」
「小学生のオレだと、ケーキのチョコでも、イチゴケーキのフルーツでも酔っぱらうからな」
「親は大丈夫かよ。もう7時過ぎてるぞ」
「弟が生まれるから、母親は入院してるし、親父は付き添いで、晩御飯の小遣い豊富にもらっているうえ門限は無限なんだ。おっさんこそ夜にコーヒー飲むと大人でも眠られないぞ」
「いい、たばこ吸わなければ眠れる」
そういってコーヒーを啜る。
その時、飾りもののベルがガランチンと鳴り、喫茶店のドアがあいた。
「ちょっと、うちのアパートの管理人の僕をこんな時間に!!なにやってるの!?」
「いや、ボーリング場で会ったんだけど。知り合いの子供?」
「この子のお父さんから電話があって、様子を見てくれって言うから部屋にいったら、こんな時間に留守だし」
「なんでここにいるってわかったんだよ」
「こんな時間にこの辺じゃボーリング場しか子供が行くところがないでしょうが。さらにその近くの喫茶店」
ゲームセンターもコンビニもないこの時代の片田舎、迷子の児童を探索するのは容易だった。


3 映画館


月曜日。仕事から帰ると、見計らったように電話がかかってきた。
「映画?」
「そう、いまから管理人さんのとこの僕も一緒に。7時に駅前に」
「わかった」
あの日、何かを3人でどこかで食べて、それから映画館に入った。
「『風と共に去りぬ』?『ジェイン・エア』?」
結局、『ジェイン・エア』にして、『風と共に去りぬ』はまた今度にした。
「あんな昔の人も恋をするんだな」
「なんだよ2人とも、遠慮するなよ」





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