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2010年10月19日火曜日

『二層式洗濯機』

『二層式洗濯機』


昭和40年代。

一浪しそうでしなかった怖いもの知らずの大学生。

夜中の2時過ぎにしなびたコインランドリーに洗濯に来ました。

古くて汚れた、薄緑色の二層式の洗濯機が3台。

しみだらけのソファ。

お金を入れるポスト型の貯金箱。

夜どうし点いている円形の蛍光灯。

一人前に傘がついているが、

2000年代も10年を過ぎた今から見れば古臭くてダサいデザイン。

蛍光灯はぶーんと唸り声を静かにあげています。

大学生は、貯金箱に律儀にお金を入れると、

誰が置いたのかわからない、半分湿気た缶入りのピースを一本取り、

テーブルの上に散らばっているマッチで火をつけました。

これも、誰が置いていったかわからない、

数週間前のチャンピオンをめくり、ピースを吸い終わってから、

二層式洗濯機のふたを開けて洗濯物を放り込みます。

いくら怖いもの知らずの大学生でも、

ふたを開けるとき少しためらいがちになります。

ただでさえ、汚れている洗濯機に変な遺物が入ってないか怖いのです。

タイマーを回し、洗濯機を準備すると、

また缶ピースの蓋をあけ一本もらうよ!と心で感謝し、

火をつけ、チャンピオンをめくります。

ガダッと戸が開き、もう一人客が入ってきました。

「うぉっ ! なんですか、こんな夜中に!?」



「いや、そっちこそ。洗濯、洗濯。たまっちゃってさ」

「ああ、そうですよね」

もう一人の客は40歳前くらい。

洗濯機のふたを開けたとたんびっくりした声をあげます。

「うおっ!!」

「わっ! なんなんですか?」

「いや、やばいよこれ。大変なモンがはいってるよ」

とうとう出くわしたかというような顔をして、大学生は

「なんですか。やばいものってなんですか?」

「見る?」

「見たくありませんよ」

「ジャーン!!」

「うわっ ! え? ぬいぐるみ ? クマの !?」

「ホントやばいよ」

「ただのぬいぐるみじゃないですか。

ぬいぐるみも洗濯くらいしますよ。

誰か忘れていっちゃったんでしょ」

「血がついている。ホラ」

「うわわわわあああああぁぁあああぁあ!!!!」

「ウソーン!! ジャムだよこれ、

洗ったんだけど取れなかったんだろうな。こんな古臭い洗濯機じゃ」

「脅かさないで下さいよ。もう、たばこもう一本吸っちゃお」

「あっ、俺にも一本取って。縁起悪いからこっち使うか」

「縁起悪いとか言わないでください。はいピース」

「あーっ、こっちもだよ。やられた !」

「もうだまされませんよ」

「灰皿とってくれる? 吸い終わるまでダメだよ。あー、ソファで休むわ俺」

「怒りますよ。プンプン!!」

「見ないほうがいいって」

「うあああああぁ!!!ああああああはあああはあはあはあ!!!!」

「な、いったろ!?」

「血がー、血がたまってるうぅううううぅうぅうぅー!!」

「バカ、絵の具だよ、絵の具。図画工作の絵の具」

「え? 絵の具? なぁんだ早く言ってくださいよ」

「おい。血か絵の具か見分ける方法知ってるか ?」

「知りませんよ」

「これ、リトマス紙」

「アルカリ性か酸性かでわかるんですか~うわわわあああぁあああぁあ!!」

「バカ、それ俺がやった技だよ」

「あれー!!」

「うっわ、やば!! 洗濯機から血が溢れてる!!!!!」

「戸が開きませんよ!」

「バカ早くあけろって」

次の日の早朝、大学生と男が洗濯機でおぼれ死んでいるのを

最初のお客が見つけました。


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