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2010年10月20日水曜日

アトランティスの戦争

アトランティス物語  


アトランティスの戦争




1 軍医イーネス


アトランティス歴2050年。

アトランティス大陸の南方の大陸を征服するための戦争がはじまった。

イーネスは軍医としてこの戦争に参加することになる。

「戦争の準備が忙しくてしばらく酒も飲んでいないとアウストロ南方司令がこぼしていた」

「お兄様。その剣はもしかしてオリハルコン?

イーネスの妹、アルアロリアが訊ねた。

「オリハルコンの剣など聖剣として

中央都市のアトランティス皇帝の宮殿に

厳重に封印されている。

あれが唯一のオリハルコンの剣だ。

我らがアトランティスの重大な危機の時、

その時代の勇者に皇帝により託され、

使われるならわしとなっている」

「でも、オリハルコンの輝きに似ているわね」

「これは、武器職人ダ・ヴィンチにオリハルコンを模倣した金属で作らせた剣だ。

それより、今夜は前勝戦の宴だ。

ダ・ヴィンチに仕立てを頼んだ黄色のドレスがある。

今から受け取ってくる」

ダ・ヴィンチは武器つくりの名工であるとともに衣服を仕立てる職人でもあった。

2 前勝戦の宴


アトランティスでは戦争開始の前祝いに前勝戦と呼ばれる宴を開く。

戦争は必ず勝つものだというアトランティス人の強い自負心からきている。

戦う前に勝利の宴を開きながら負けるわけにはいかない

と軍人たちの士気を高めるのである。

はじめて、宴に出席したアルアロリアの人気は高かった。

黄色いドレスをきたアルアロリアの美しさは宴に出席した婦人の中でも際立っており、

イーネスは我が妹ながら自慢に思った。

人々がイーネスとアルアロリアに口ぐちに挨拶していく。

「美しさのあまり、女神の嫉妬をかいませんように」

「大神ゼウスが切り離したあなたのもう片割れに早くめぐり合いなさいますように」

そのときアウストロ南方司令が近付いてきた。

「それはまた古臭い挨拶だ。

大昔の人間は男女が一つにつながっており、手足が4本あったなど、

不気味でしかない上にどう考えても不便だ。

私は古臭いことが嫌いだ」

「アウストロ南方司令、こちらが妹のアルアロリアです」

「はじめて。イーネス殿の妹君」

「はじめまして」

「イーネス殿はご結婚なさらぬおつもりか。

もう40をとうに過ぎていましょう。

ご婦人はお嫌いかな ?

「アトランティスの慣習に従い、アルアロリアが婚礼の儀を果たしてからと思いまして」

「そんなアトランティスの古いしきたりなど、今どき誰も従いませんぞ。

イーネス殿は頭が固い」

貴婦人たちは気分が悪かった。

アルアロリアの人気に嫉妬してヒソヒソ話していた。

「あの頭の固いイーネスの妹ですもの。同じに石頭に決まっているわ」

「イーネスは妹を自慢げに連れてきて、何のつもりでしょう。

イーネス一人でも口うるさくて宴に来ないほうが気分がいいのに」





3 舞踏



その後、何人かの男がアルアロリアにダンスを申し込んだ。

アルアロリアは「兄が戦争から帰るまでご遠慮させていただきたく思います」と断った。

マンティコア(巨大な獅子で尾がサソリ)を見てきたという男が、その時の話をした。

「砂漠の奥を進むと水や草木がある土地にたどりついた。

そこでマンティコアを見たんだ。

人食いだというがあれは本当だ。

私は襲われそうになったんだ。

命からがらだった」

張り合うようにセイレーン(海の精霊。歌声で船乗りを誘惑し、船を沈める)

の話をする海の男もいる。

「航海のとき、伝説にあるセイレーンに襲われた。

本当に甘美な歌声で、

我々はこのまま海で死ねるのなら船乗りとして本望だとさえ思ったんだ。

しかし、歌声に波の音がまざったとき海神ポセイドンに祈りをささげた。

船は難破したが、何人かの船員は岸に流れ着いたというわけだ」

水で薄めた葡萄酒が杯に注がれ、アルアロリアに手渡された。

それを飲み干したアルアロリアは、ほんの少し頬が上気し、

イーネスと二人でテラスに夜風にあたりにいった。

「マンティコアやセイレーンなんて本当にいるのかしら、お兄様」


4 戦争


アウストロ南方司令が叫ぶ。

「蛮族ども ! 我らがアトランティスの文明を受け入れるがいい。

原始人の生活をしていた、うぬらに言葉と酒と武器と

叡智の光を与えたのは誰だったか思い出してみるがいい。

貴様らの武器など、我々の技術で鍛えた剣とは切れ味も硬さも違う。

戦ったところで勝負は目に見えておる」

「われわれには今だけの文明で十分だ

貴様らのような醜く肥った豚になり下がるつもりはない」

アウストロ南方司令が、回転式投弓砲の発射を支持する。

幾本もの矢が敵陣を襲う。

その時、天からではなく敵陣の前方から稲妻が轟音とともに落ちてきた。

矢はすべて一瞬にして燃え尽きた。

イーネスと同様、神通力をもった敵軍の長が発したものだった。

「貴様らの文明を受け入れ、支配下に置かれる筋合いはない。

文明になれれば、きさまらのように神通力を使えるものがほどんどいなくなる」

アウストロ南方司令が号令をかける。

「国家の体をなしてない蛮族の部落に我らアトランティス軍が負けるわけにはいかない。

全軍総攻撃をかけろ !

「アトランティスの大陸ごと海に沈めてくれよう。

忘れるな、貴様らの言う蛮族が力を合わせ、

その気になれば貴様らは海の底だということを」






アトランティスの戦争 完



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