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2010年10月20日水曜日

二層式洗濯機置き場の長い夜

二層式洗濯機置き場の長い夜







昭和40年代。

夜12時すぎ。

「うわ、おまえやめろ。こんなところで勉強なんかすんな」

40手前の営業マンがコインランドリーの戸を

あけて中に入るなり言いました。

「まる一日も寝込んじゃってレポートの期限が危ないんですよう」

「おまえ、あれ救急車呼ばれてきたとき、

気がついたら血なんか一滴もでてなかったぞ。

あれだよ、あの女、中国の気功法とか使えるんだよ」

「それはそうですけどね、レポートがね」

「おまえ学科なに?なんなの?」

「普通に経済学部ですけどね」

「勉強して意味わかるの?」

「アダム・スミスの国富論を読んだら、

これはいけると思ったんですよ。

だけど、ケインズなんか読んだらいみ不明の数式まで出てくるんですよね」

「経済とかよくわかんないけど、

数式で計算して予想とか本当にできるの ? 

いや、俺も経済学部出身だけど、古いやつしか習ってないんだよ。

俺これでも40過ぎなんだよ」

ブー

「タイマーが切れるブザー音。なんか安らぐよな。

なんか昭和の香りがする」

「貧乏学生は貧乏洗濯する暇なしなんです」

「おまえ、たばこふかしすぎ、ここの缶ピー、みんなの物なの」

「いや、エリマキトカゲとかはやると思うんですよ。

生物学科の爬虫類学の講義で知ったんですけどね」

「経済じゃないの。

パチンコで勝ったから、たばこおすそわけ、缶に詰めといて。峰3箱」

「いや、もぐりで授業うけたんですよ。

あれは受けますよ。傘みたいなのが開くんですよ」

「エリマキってんだからエリマキだろ。エリマキトカゲ」

「昔のゴジラに出てきそうなんですよ。巨大化したら」

「それより、おまえさ、いくら忙しくても、

たまにはここの掃除しろよ。俺なんかお前がいないときいつもやってるよ。

モップとか雑巾とか置いてあるだろ。無人なんだからさぁ。

セルフサービスの食堂とかたぶんこの時代から普及したんだよ。

よく知らないけど」「今夜こそ何もおきませんよね」


「レポートがヤバいんだろ。力士が洗濯に来るとか?就寝時間厳守だよな」

「峰ってなんか喉がかわきますよ。ほかのたばこでも同じですけど」

「ジャーン。フルーツ牛乳。飲めよ。まじめな学生さんに特別サービス」

「ホントですか。ありがとうございます!!」

「いや、逆に何もおきないとかえって緊張するな」

バチッ! バチッ!

「ハイハイ、起こりましたよ。

プラグのコードが古くなってむき出しだよ。

危ないよこれ。お前、ドライバーとカッターもってる」

「携帯用ですけどありますよ。直せるんですか?」

「お兄さんにまかせなさい」

「焦げ臭いですよ」

「ヤバいはこれ、コードがむき出しとかのレベルじゃないよ。

モーターのエナメルがとれてんじゃないの。爆発するよこれ」

ジジジジジッジジジイ

「うぁわぁわああわあわわああああぁぁあ」

「伏せろ!!!!」

ボカン!!!!

次の日の朝、二人は煙の中から無事救助されました。

レポートはどうなったのかまではわかりません。

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