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Another
War ―もうひとつの戦争―
第十六部
Another
War ―もうひとつの戦争―
1
セルウィウスが常時駐在する建物。
一地域を管轄とするが、任務と地位がさらに重くなってきた。
軍部の改革に着手しているが、セルウィウスは決断を迷っている。
自分の部屋で机にむかい地図とノートを広げ考え込んでいる。
軍の必要経費はさらに増している。経済において爆発的なバブル経済のような帝国であっても、予算のはいり口という問題を抱えていた。
「うーむ。税金からの支出と別に任意で一口いくらの軍への資金提供か…」
営利企業や資産家からの軍への資金提供をつのるという。
税金と違う、軍のみの税だ。
なぜなら、帝国民全員に軍の充実は戦争時代のローマのように必要ごとであったからだ。
モンスターの襲撃から守り、植民地の治安を維持する。
「だが…金を払った金持ち優先に護衛することになりかねん……」
グラウディウス帝国のこの時代、社会保障や非営利団体など、慈善事業、寄付など、一定の生命線のためのセーフティネットなども、金持ちや企業などの任意の寄付に依存するところが多いのが事実だった。
もし、民間企業からの資金の流れがストップすると、税金だけで今のような最低限のセーフティネットが維持しきれなかった。
「…老王は適度にしごかれた方が、たるんでいるより、さっぱりしてさわやかに暮らせるみたいな、学生のスポーツみたいな演説をしているが……こっちは黙っていても仕事が減らんで扱かれている!!」
改革は実行してみないと結果がわからない。実行すれば、なんらかのデータは得られるが、うまくいかなかったとき責任をとるにとれるものではなかった。
いくら未来の哲学と科学に守られたグラウディウス帝国といえそれは何ともしがたい。
「わたしが…あまり新制度の前例を作りすぎてもまずい…」
パソコンを起動し、経済ニュースを取得する。
どこも潤っている。
「わたしは…経済の専門家ではないが…こうも儲かっていて、なぜ軍の資金がたりなくなる!?経済なんて資金の流れだ。しこたま金がたまりましたなど、帝国全体では一部の民間でのたわごとなのかも…それより、技術革新とか一定のリズムで生産できる工場とかのほうが信頼できるのかもしれん」
あっちが儲かったらなら、こっちにその金を払うとこっちはこき使われる。
ドングリの背比べなのかもしれない。
そのとき、あわてて兵士が入ってきた。
「セルウィウス統括本部帝!」
百人隊の若頭という地位でもあるが統括本部のトップでもあった。
「ノックぐらいしろ!なにごとだ!?」
「ハッ、ゾンビのドラゴンが暴れておりまして…実は通常の兵士では苦戦してまして…その…百人隊の出動の許可を!」
「…わかった、許可する。だが、百人隊で確実に始末しろ!」
2
「なに!?グラディウスがお見合いの世話をしている」
老王ロームルスはおどろいてふりかえった。
「ネットじゃどこにもやってないよ。極秘に伝わってきた」セプティミウスがいう。
「なぜ」
「うちだよ。あなたが老王だからだろ」
「なるほど伝令か。グラディウスに頼りにされるのも具合が悪くなるが、無視されてあっちでどんどんやられても気になる」
「そんなところだろ」
「それで誰のお見合いだ。何のために」
「後継者確保のためだってもっぱらの極秘のうわさだよ」
「なに、つい最近皇帝になったばかりで、もうなげだすきか?あいつ」
「そういうわけじゃないけど、後継者を確保して自分の権力の身を固めたいんだよ」セプティミウスは紙のレポートを読みながらいった。
「なるほど、皇帝候補にヨメさんを世話して恩を売ろうという気か。腹黒いやつ」
「ポーラさんってエスフラーデスのときお世話になった女の人が今頃お見合いしてるって。一報を入れたいらしいよ」
「誰に?」
「ボケてきたかい。老王にだよ」
3
自分で自分のお見合いを用意する人もいるだろうが、難しいケースもある。
皇帝グラディウス直轄のお見合いだった。
真丁寧な飾りが厳重についた案内をポーラはビールを飲みながら読んだ。
ネット通販の段ボールぐるぐる巻きの小包みたいだった。
《お見合いなので不必要に肌をさらさないこと。お見合いを楽しみすぎないこと、喜び過ぎないこと。ご縁がなかったときのことを重々考えて行動すること》などなど書かれている。
読んでポーラはやや考え着物を選ぶことを判断した。
地球の日本の着物がなぜグラディウス帝国にあるのかは定かではない。
喫煙歴をどうするかポーラは30分ほど考えた。
一カ月先送りで絶煙したことにすると決めた。
ブラックメンソールの煙草はその日から消えたが、なぜか苦痛なく禁煙できた。
その人は、帝国の特使を務めているという、あったことのない人が仲人と進行案内、相撲の行司さんのようなひとだった。
建物はあまりメジャーでない。質素な近隣の界隈にあった。
タクシーでそこまで来て中にはいる。
※なぜ両親など出てこないのか不明である。
なかは明るく輝いていて、新鮮で清潔、きれいであったが、みなれないデザインなのは確かだった。
日本でいう鯉のぼりとかゴエモンという雰囲気のデザインのような気がした。
そこまで観察している余裕がポーラにはなかった。
デミストクレスという次期皇帝を名のる男性だった。
やまっけが強いとポーラはすぐ直感したが、体力とやる気には確かに信頼できそうだった。
すもうの行事のような仲人がいったん中断させ二人を離した。
交互に確認をとると、もう少し見合いが続行になった。
「では…良人のご意思がありましたので」
そういって小さい杯に紅茶でなくお酒が今度は出された。
「一杯だけいただきます…」
ポーラはそういって飲んだ。
4
デミストクレスは帝国の各地で小さな講演や演説をおこない、次期皇帝は自分であると主張していた。
サーカスの小屋のような小さいテントで人を集めて何かしたりもしていた。
言論の自由のようなもので、罰則などはないが聴講者は誰もそれほど本気にしていなかった。
意外なことにセルウィウスが関心を持っていて、仕事の取引で顔見知りになっていた。
ビジネスをはじめたが、そううまくいかず、「わたしは商売はあまりうまくいかないところがあるが、グラウディス帝国を引き受け、大帝国にすることは心得ている」などと吹聴していた。
セルウィウスは今は小物だがいずれはそれだけで終わるまい。傑物となって帝国に貢献するだろうとなぜか彼はそう期待の目でデミスとクレスをみていた。
彼が「次期皇帝」と声を荒げると、「ハハハ」と笑い声もまじるが人気もそれなりにあった。
だが、彼本人は30代も終わろうとしているのに浮かばれない人生を送ってきたと密かにがっかりしていたのだった。
《お見合いが楽しいのは仕方ないが、それを楽しみすぎないように》というたしなみがあったが、彼でそこまでうれしいわけではないのではないのか、ともいえるがデミストクレスには未達成で未知の力があふれていた。
5
「かっ、勝手にしきたりをつくるな、グラウディウス。どこそこでしきたりは違うんだ。わたしがやらせているみたいだ。老王公認などとされたらどうする。彼らの見合いの日、わたしのハートには心痛が走った」
ロームルスはミネラルウォーターをガブガブ飲みながら手紙を読んでそういった。
「だいじょうぶ?老王」セプティミウスがやってきた。
「おう、セプティミウス君。みてみたまえ、グラディウスは失態を犯した。皇帝になりたいやつがいないときのために複数の皇帝候補を確保するつもりだろうが、誰もかれも皇帝の座をねらったとしたらどうするんだ、グラディウス君。お家騒動になる。世話したお嫁さんにも恨まれる。わたしのときはグラディウス一人が立候補して、彼しか敵人がいなかったからすんなりいったが、あの時空警察の国士無双と詠われるジュピターとかいう青年剣士はどうする?」
「ああ、なるほど立候補者がいないと困るけど、立候補しすぎても覇権争いになるんだ。そりゃたいへんだね」
6
ポーラに夕方の6時ころホームテレホンに電話がかかってきた。
「ええっ、そうですか」
ポーラとデミストクレスがお見合いした建物は焼きはらったという。
風水学者によると、のちの人に参考にされるまでは良いが、そっくりまねをすると運気が下がるという。のちの人の運気も悪くなる。それは自分たちで工夫する心構えが大切という考え方で、制度でも建物でも使い回しをしすぎるのが凶という風水学者の先生の意見だという。
「そこまでしなくても」ポーラはそうおもったが、お見合いから恋愛に移行しつつあった。
7
グレートシティ
ユニオーンという青年が日中、グレートシティの公園をぶらついて溜息をついていた。
「はーっ」
ユニオーンはヴィクターの従弟だ。
彼はヴィクターが「へたれ皇帝」として泣いて帰って来たらなぐさめてやるつもりだった。
だが、真逆に彼は出世をし、帝国の女性と婚約するなどそんなそぶりもない。
「ふーっ」
むしろ、トップのグループとヒソヒソ密談しているかのようにさえ思えた。
「おちこぼれになったきぶんだ」
学校を卒業後、ヴィクターと違い時空警察にも努めずぶらぶらしていた。
文武とも全く駄目でもないが中途半端な彼だったが、ヴィクターと違うやさしさをもっていた。
公園のベンチにこしかける。
緑が豊かで噴水のみずしぶきが煙のように待っている。
昼特有の静かさがあった。勤め人や学生は会社にいたり、学校にいる。
主婦と幼児くらいであとは公園とは違う場所が、ガクガク血気盛んになっているのだろう。
ブラックメンソールの煙草にジェットライターで火をつけ、煙を吸い込む。
「ふーっ」
なぜかわからないが、彼には通行人のビジネスマンからお年寄り、子供まで集まってきて彼を眺めた。そういう人気と違う人気みたいなものが彼にあったのは確かだ。
「お兄ちゃんお腹痛いの?」
ユニオーンは立ちあがると腕を振った。
「見せもんじゃないんだ。さあいったいった」
8
ライトアリスタンダー祭はコインメタトリーでもおこなわれる。
グレートシティのお祭りもみたくて、エドアールはアルバリシアを誘った。
アルバリシアははじめ、「そんな遠い旅は」と断ったがついていくことにした。
宇宙船はシステムが完備されて安全だといって説得した。
アリスタンダー祭はアリスタンダーをたおしたときひらかれたが、二度目のライトアリスタンダー討伐とあわせてコインでは一つのお祭りとした。
クリスマスはさすがにグレートシティやコインではない。
しかし、地球と違うイエス伝があり、似ているが違うクリスマスもある。
ラグナクロクから車でエカルテにはいり、そこの空港から飛び立った。
荷物は向こうのホテルに直接送った。
「この旅行船に一緒に積んであるのかな」アルバリシアがエドアールにきいた。
「それだとリアルタイムだな。少し早い船で一歩先をいってるんじゃないのか」
グレートシティ
ホテルにチェックイン。
その日は中で休んで、次の日の昼近い午前、ライトアリスタンダー祭にむかった。
広い公園で出店などが開かれてにぎわっている。
ウッドハウスのような店がずうっとつづいている。
ドイツのクリスマスマーケットのようであり、日本の祭りのようであった。
かき氷の店、ワッフル、ホットワイン、ホットドック、フランクフルト、ソーセージに辛いあじつけしたもの、焼きそば、透明カップにはいったビール。チーズフォンデュ…
クリームシトロンを買っている女性がいた。
ふりかえってベンチとテーブルがならんでいるか所にもどろうとしたときエドアールと目があった。
「あ」
「ああ、偶然。エスフラーデスであった。ナギサさん…」
「こんなところで会いまして」ナギサはそういって笑った。
驚いたことにこんがり真っ黒に日焼けしている。
(ファンデーション?ってやつか…)
化粧を落とす薬でふいたら白く戻るのかと考えた。
あとでアルバリシアにきいたら化粧かもしれないし、日焼けしたのかもしれないという。
立ち話を少ししていると、キンコンカンと心地よい鐘の音が鳴った。
《これよりパトロクルス氏の講演が行われます》
「あっ、はじまった。いかなきゃ」ナギサがクリームシトロンをもったままホールのような段がある講演にいこうとした。
「パトロクルス?」
「ファンなんです。じゃ、エドアールさん、アルバリアさん。また、どこかで会いましょう」
そういって走っていく。
「かっくいい~」エドアールはそういった。「彼がライトアリスタンダーをたおしたのか?」
「さあ」
9
ユニオーンはポケットに手を入れて歩きだした。
「金もないし、行くとこもないってのは辛いな」
グレートシティは時空警察、つまり警察の本拠地だが、そういう警察ではない。
監獄や刑務所などあるのか不明だが、なぜかムショあがりのようなゴロツキが出没することがある。
「よお、あんちゃん。ストリートファイトで勝負しないか」
「あ?」
路地裏でユニオーンは殴られていた。
「ぐはっ、がは」
ミゾにひざをもらってかがみこんでいた。
ゴン
背のひょろ長い男がオーバーランスで頭をつついて立っている。
「なにしやがる。てめえもまとめて相手してやろうか!?ああっ!!槍は反則だぜ兄ちゃん」
そういうとストリートファイト野郎は逃げていった。
「がはっ、早乙女(さおとめ)か」
「おまえ、こんなところでやられてどうするねん」
「俺たちみたいなのが刀槍を持ち歩くとうるさくいわれるぞ」
「そやな。オレみたいなハポネス星人には就職の道もないわ」
「バカいうな。よその星からきても務めているやつはいるぞ。俺達がバカだからだ」
「それでな、おもしろいものみつけたで」
そういってチラシを見せてにゃっと笑った。
10
エドアールとアルバリシアはナギサと違う席に座ってパトロクルスの講演を聴いた。
満席というほどでもないが、うまっている。
あっちのほうからミュージシャンのライブかカラオケの声がまじってきこえる。
野外ステージはなかなか高いところからマイクで公演された。
次世代の守護神というパトロクルス。
彼にいわせると、現在のメガロポリス、デカポリス体制は古びている。
宇宙ステーションである巨大なコスモも建築中であるが。二大都市とコスモ以外にもう一つの都市国家をつくり、そこの権力を分散するという。
「おーっ、さすが次世代の守護神」エドアールは感心した。
時空警察領は地球のような球の星ではない。
どちらかというとコインのような感じだ。
チョコレートの板のような平面がずずーっと敷き詰められている構造をしている。
そのため増築は可能だった。
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