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2014年10月10日金曜日

戦いが去って







戦いが去って            








1



エドアールとアルバリシアは結婚式に来ていた。
ホテルに付属のチャペルウエディングでホテルの庭のようなところでおこなわれていた。

「これなんて読むんだ?え、エコ」
「エコール。」
「わかるのか」

見慣れない看板がある。

ラグナクロクのホテルでゴールドウィンとまた違う雰囲気のシティホテルだった。
濃い色の紫と白の二色でシンプルな建物を維持している。

「ああ、親父の権力の関係者だ。オレ自身には疎遠だな」
脇役として静かな手ぶらの時間を楽しんでいた。
血気盛んなころなら持て余していただろう。
なんだか天国のようにふわふわ浮いている。

「ああ、親父とおふくろ、あんなところにいるさ」
「ちょっとエドアール。素敵よあれ見て」
アルバリシアは式場の何かに見とれている。

「冠婚葬祭をとある事情から免除されているオレが今回は呼ばれてきた。弔う気持ちはあるが参加しないで悪いかな。いや、オレがいっても役に立たないか…」

ブーケトスになって花嫁が後ろから花束を放り投げた。
「拾うなよ。アルバリシア。おっと、こっちにきた、男のオレがもらったらやりなおしかな」

矢表にたたされない、静かな、ゆりかごの赤ちゃんのような清潔でゆっくりした空気。
その反対は魔王との死闘の戦地の状況だ。
部外者であり(列席しているからいいすぎか)自分には石も棒も当たらない。
赤ちゃんの姿をした天使がほほ笑んで寝ころんでいそうだった。

わっと歓声があがり、誰か女性がトスをうけとったらしかった。

「…魔王との死闘もおわったか。不参加が続くと財布が軽くなってきた気がするな」
だんだん少し退屈になりかけてきた。


ひきでものに『ブーケトス・クーポン』というカードをもらった。
「なに、結婚式場にこのクーポンがあると割引になり、得点がついてきます…オレはもう結婚しているからな。いや、式はやっていないのか…」



2



エカルテ城・王間

王間にキッズ用テントがなぜか設置されていた。
なかからトテッチがでてくる。はしってクラークに抱っこされた。

ライトアリスタンダー討伐から帰還したマジックギャルがいる。
「お茶は何にしますか」秘書猫がたずねる。
「ええと、シナモンティー?」
「わかりました」
クラークはなぜかマジックギャルがいるとうれしそうだ。

「闘いは大変だったか。いや、あたりまえだな。その歳の女の子で。いや、俺が出張ってもライトアリスタンダーなどシンドイ…」
「大変でした」
マジックギャルは死闘の後の平和をかみしめていた。

エドガーがはいってきた。
「孫どうしをたたかわせて歓こぶんですかな。クラーク王」
「そんな趣味じゃないぞ、エドガー。それに孫じゃなくて娘だ」
トテッチをマジックギャルと遊ばせたい意識があった。

クラーク 「マンマ」
トテッチ 「ウマ…」

ぽかぽかして暖かい。
魔王はもういない。
なにもしなくても暖かかった。

「ゆっくりくつろいでくれ。エカルテの街にも見るところあるし…ニコニコタウンはい心地いいかい?」
「ええ、いい環境です」

マジックギャルだけに魔王との死闘はトラウマにならなかった。

「マジックギャルって名前はなんていうんだ」クラークがきいた。
「マジックギャルに名前なんてありません!」
「そうか、そういうものか」

どうしても地球の日本人のときの名前が思い出せなかった。
両親はどうしているだろう。

クラークはいった。
「おれなんか、地球から来たからな。だから王が務まるのかもな。コインの土地は地元でないから他意がない。だから客観的にみられるところあるのかもな」
「ああ、本来部外者だから…」
「そう、そんな…」

マジックギャルはその夜、
ニコニコタウンでお風呂に入って髪を乾かし、ベットで休んだ。
「むにゃむにゃ」

なんと地球にもどっていた。
日付を確認するとあの日とおなじで時計をみると1時間しか経っていない。
「へにゃ?」

机の上の教科書も同じだ。
「なつかしい…けど。私の部屋だ」

もういちど寝るとニコニコタウンのベットにいた。




3




グレートシティ

キングレオビル


ステファノが久しぶりに出勤した。
ライトアリスタンダーは倒した。

オフィスのはしにある書店をちょっとのぞいて、自室に歩いていく。
途中でヤマダにつかまった。
ヤマダの部屋にひきこまれる。

「ステファノさあん」
「モーニン。どうしたんですか」
「いや、予算あまっていたの前のシーズンで、今冷え込んでますよ。感じませんでした。オフィスで大きい買い物したんで、金が不足してるんですよ。便利なもの買った分節約節約で」
「オー、コーヒーとか書店のサービスも!?」
「いや、あれは売上入るからまだですけどね。ペンや紙の備品も電気代も節約厳守で」
「ああ、なんかふんだんにあるオフィスだなと思っていましたが、片方便利になると、片方貧乏に…それで何を買ったんですか」
ヤマダはいった。
「管理職以上全員手当大幅カットですよ」
「ええ!?何割?」
「二割」
「ふー、はさみをいれられたか」
「実は骨組みが完成した、無骨なコスモに移動できる、専用カート(小型宇宙船)です。メガロポリス宇宙空港から発着できるんですよ。そのタダ券、従業員全員分」
「でも、観光じゃなく仕事でしょう」
「コスモの居住権を買い占めたんです。従業員全員分」
「住むだけでお金をとられるのか。そんなつくりかけの新築の家に行き来するみたいな」
「オフィスで借金こさえて、次の予算が来るまで、間借りしているみたいに冷え込んでますよ」
「来たばかりのころみたいだ」
「でも、怖い分身を入れて仕事してますけどね。みんな」

(ギャンブルは違うけど、株式相場くらい山を張っている。コスモの住み心地が悪ければどうする気なんだ。反対に住み心地がよければ地価も居住権の価格も高騰する!)

調書「逆ノアの方舟」のように、新世界、時空警察の巨大宇宙ステーション・コスモの価値は相場のように揺れ動く…

シナモノや貨幣、証券やサービスの価値などギャンブルや株式相場のように不安定に揺れ動くものだろう。
この小説の価値も、書き過ぎれば価値が薄まって、二束三文になるし、おもしろい小説が対抗して値段を下げられてしまう。
ひたすら労働して活字の数を増やせばいいものでもない。




4


所長にも呼ばれた。
「おめでとう、ステファノさん」
気前よく、ヤマダは挨拶する。
「ライトアリスダンダーをたおしてきたな。オーケー」
所長もお祝いを述べる。
「戦ってきました」
「こっちの勤務は常勤?」
「週に1回あっちの勤務が。ほかはこっちに通います」
1回か。戦闘員を育てる仕事だったな。ふーむ」
所長は煙草に火をつけ吸った。

「しかし」所長は切り出した。
「今回の決定は、わしでもそう簡単に覆せないぞ。それに外部にたいして肩身が狭くなった。居住権を予算で買い占めたうえ、借金をこさえて。何か言われると、強気になれんて」
「そうですか」
「働きで返していきましょうよ」
ヤマダはやるきだった。



5


朝にはあったやる気も減耗してきて、デスクワークが無味乾燥になってきたころ、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ、ヤマダさんでしょ」

探検旅行か遠足に行くような格好をして、ヤマダと女性秘書がたっている。
「いやあ、いよいよ行ってきます」
「コスモに」
「ええ、来週帰ってきます」女性秘書がいった。
部下数名をつれて、建築途上の宇宙ステーションに遊泳しにいく。

「じゃあ、留守を頼みます。行ってきます」
営業マンが訪問にいくみたいにヤマダは行ってきますと出ていった。

ステファノは少しの間うるおいを感じた。
ステファノの男性秘書は姿を見せない。
「もう帰宅時間近い」
そのころになると所長がさわぎだす。

デスクの電話が鳴った。
「やっぱり…」

部屋に行く。
「ヘイ、スタッフが足りない。役員をふやすぞ」
「外部から引っ張ってくるんですか」
「いや、部長をひとり昇格させる」

結局31Fの責任者としてBフロア専任役員とした。

次の日の昼休み、ステファノは昼食を一緒にとることになった。

キングレオビル45Fの中華レストラン街。
中華マンの蒸した蒸気のようなのが充満している。
ラー油の辛さが歩いているだけで食事させられる。

「借金があるのにこんなところで食事するのもおつですね」
ステファノと元部長のBフロア主任は【げんこつラーメン】を食べた。
「帰ってしごかれた後、暖かい飯にありついているみたいな感じで美味しいです」

暑苦しかったらあったかいラーメンがまずくなるかもしれない。
「寒い」
「サムイ」
と二人はラーメンをすすった。

そのあとかなり下のフロアにエレベータでさがった。
Bフロア主任が喫茶店に案内するという。

そのフロアはレストラン街ではなく、小さい営業所みたいなのが点在している。
逆に廊下を歩いている人が全然いなくてシーンとしている。
そこに、ぽつんと場違いに喫茶店が入っている。
穴場という感じで隠れ家みたいだ。

「窓の外が長めがいいんですよ。ほら」
「ホントですね」
ステファノはコーヒーを頼んで飲んだ。
ビルの裏側のみなれない地形がみえる。

食後のコーヒーを飲んでくつろぎ、二人は職場に戻った。
実際、一日にはいるコーヒーは二杯が限度だと思った。
この男はあまりしゃべらない。的を得た発言をしそうだが、なかなか持ちつ持たれつとは難しいものだとステファノは思った。



6


ニコニコタウン

朝起きると寒い。
窓の外を見ると雪が積もっている。
「ああ、さぶ」

お湯を沸かす。
ニコニコタウンの欠点は脂肪のついたオヤジのように、暑苦しいところがある点だ。
デパ地下のような熱気がごちゃーとおしよせるようなところがある。
だから…
今日みたいに雪が積もって寒い日は痩せたみたいにスリムだ。
家電がたのもしくみえる。
家電家具は財産だ。

《太陽光だけで発熱できますので、節約しないでエネルギーをつかってください。現在の自給率は100%をこえております》
電子頭脳が生活をサポートしてくれる。
設備が壊れた時の保険も太陽発電から電力をもっていかれることで、賄われている。

「蓄熱設備っておもしろーい」
だけど、無人のお城にひとりでいるみたいで、無機質だ。

マジックギャルはテレビをつけた。

夏のギラギラしたような天候のときなど、設備など無用の長物のような感じがする。
「汗でべとべとするみたい」

だが、寒いと力強く感じる。

マジックギャルはこの年で過ぎたるは及ばざるがごとしをマスターしていた。

クラーク王の城にいく。

トテッチが腕を広げてかわいくしゃべる。
「こんな、おおきーいチョコレートケーキを焼いてもらうんですな」
「ははは、よかったね」

トテッチはクラークのほっぺたをひっぱった。
「おっとう、くちゃいですな」
「ハハハ、臭いか。そのくらいでいい。めんこいぞ」






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