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2013年9月14日土曜日

『パァンとサアカス』 第一部

『パァンとサアカス』






作者あとがき:今読んでみるとだらしない小説だ。男女が混じって酒を飲んだりしている。

まあ、架空の世界ということでご了承ください。家族ぐるみの付き合いとか否定する気はないが、

こんなごちゃまぜでけじめのない世界でもある。結婚した主婦など夫以外の男性と

親しくするのはやはり不作法だろう。

面白可笑しい素人の小説なのでその辺ご了承を。

では、パァンとサアカスです。















イワン・タリャーゴフはエスーフエルフ・マロマデシャの飼い犬とソルコリギター・ソリィコギッチの手伝いもあり、ロシア強盗から盗られた額の倍の金額を取り返した。
3人でウォトカを飲みながらパイプをふかしていると、イワンに絵を描いてほしいという二人が来た。二人は恋人同士で、ピョートル・イアアという青年は恋人のヘクトリューシャと自分の絵を描いてほしいといってきた。ウォトカの瓶とパイプを道の端に片づけ、イワンは絵を描きだした。ヘクトリューシャは頭にカチューシャをしていて、美しく、イワンには20代半ばの年の頃に見えた。ピョートル・イアアは30歳前といったところか。途中まで描いて、さすがに辺りが暗くなり、「暗くて、もうダメだ!明かりのある居酒屋に入ろう」とイワンが宣言した。「さっきの金があるさ」エスーフエルフ・マロマデシャもいった。「私も懐から出そう」

2


「パミラ・ミミトンの店にようこそ!」
20歳くらいの女店主はそういってサーロ(脂肉)を皿に載せてきた。
「うちは白パンもサーロもただじゃないよ!」
女店主のパミラ・ミミトンはそう怒鳴った。
「金を払うよ!姉さん」
イワン・タリャーゴフは宣言した。
「気前のいいことをいうと、また昨日のことみたいになるぞ、イワン・タリャーゴフ君」
ソルコリギター・ソリィコギッチはいった。そしてもう、エスーフエルフ・マロマデシャと飲み食いを始めた。
しかし、イワンは何も口にしないで、ピョートルとヘクトリューシャの絵を仕上げにかかった。そしてすぐに終わった。
「あまり上出来とはいかなかった。サーロふた切れ分といった出来栄えだ」
ピョートル・イアアはサーロと白パン、ウォトカを注文し、ヘクトリューシャとダンスを踊りだした。

3 


イワンは白パンをちぎりながらパミラにいった。
「それにしても冷えるよ、姉さん!ペーチカにケチケチせずまきをくべたらどうかね」
「寒い人はウォトカを煽るか、ダンスを踊りなよ!まきは貴重だよ」
そのときソルコリギター・ソリィコギッチのどなり声が聞こえた。
「表に出ろ、ピョートル君!」
「離れたところでやりあいなよ!商売がたきだよ」パミラ・ミミトンが怒鳴る。
「お姉さん!営業妨害っていうんだよ。いいぞ!やりあえ二人とも!勝者にはオレがウォトカを御馳走しよう!」絵をかきあげ、安心しているイワンは興奮して、無責任に煽る。
ソルコリギター・ソリィコギッチがイワンのイスにぶつかって倒れた。
「どうした!ロシア強盗の時の勢いは!ソルコリギター・ソリィコギッチ!」イワンがはげます。
ヘクトリューシャが叫ぶ「なんで止めないで煽るの!?ここの人たちは!!」
ソルコリギター・ソリィコギッチはイスを両手で持ち上げピョートル・イアアに力任せに叩きつける。イスは足がバッキリと折れた。
エスーフエルフ・マロマデシャはパイプをくゆらせ、ニコニコしている。
「弁償だよ!」
どなり声が聞こえる。
ヘクトリューシャはあきれて、サーロをつまんでいる。
パミラ・ミミトンがドアを開けて、カザーク(コサック)を数人店に入れた。そして、乱痴気騒ぎをおこしている二人をつまみだせとお願いした。
カザークの一人が、素手で殴りかかる!
「やや!ここは加勢だ!イワン・タリャーゴフ君」エスーフエルフ・マロマデシャも上着を脱いで、参戦した。

4 


ソルコリギター・ソリィコギッチは朝目で目をさまし、体に痛みを覚えた。
自宅のベットで寝ている。酒は昨日ほとんど飲まなかったが、乱痴気騒ぎのときに右肩と左足、ひざの擦り剝け、頬骨にくらった、ピョートル・イアアの渾身の突き。さらにそのあとのカザーク(コサック)たちとの攻防が40を過ぎた体にはこたえた。さすがの彼も今日は事なきを得て帰路につきたいと願う始末であった。
仕事の帰り、踏切をこえ、まっすぐうちに帰った。
エスーフエルフ・マロマデシャはパミラ・ミミトンの店でチーズとウォトカを飲んでいた。ピョートル・イアアとヘクトリューシャの相談を受けて。イワン・タリャーゴフもいた。
エスーフエルフ・マロマデシャはいった。「君たちは結婚しないのかい?」
「よくあるけどその相談だろうな」イワンがいった。
ピョートルが語るところによれば、ヘクトリューシャにはルサルカ(水精)がとりついている。彼女の死産した姉の霊だという。
イワンが沈黙をやぶっていった。「エドマンド・オーム卿のまねだろ。いつからシリアスな小説になったんだい」
エスーフエルフ・マロマデシャもいった。「ははは…乱痴気騒ぎなら加わるが、そういうのは専門外だ」
パミラ・ミミトンがいった。「真面目に聞いてあげなよ。ゴオゴリ(ロシア近代小説の父)の妖女(ヴィイ)みたいだよ、私たち(この小説)」 


5


読者の皆さんは日本人であり、ロシア小説もどきを読んでいるわけですが、
わたしなどTVで総理大臣を見て思ったことがありました。もしかしたら総理大臣はフリーターと同じなのではないだろうかと。それは次にやることを秘書(?)が決めてあり自分では行動できないようにみえるし、休憩も自分の意志ではできない。つまりスケジュールが人によってがんじがらめなのではないのかと。
大企業の経営トップなどももしかしたら、そういう意味で逆にフリーターのように自分の意志で行動や休憩がかえってできなくなるのではないかと。
フリーターは上の立場のひとに次にこれをやれといわれます。それが自分の雇っている秘書であるだけで違いがないのかと。
総理大臣やなんかに詳しいわけではないのでわかりませんが、中間の管理職など、職種によっては自分の行動がある程度自分の裁量で決められるようです。アメリカの映画では警察官が制服姿でハンバーガーとコカコーラを飲んでいます。完全にフリーランスの自営業者は自分で何でも管理します。マンガにでてくる悪の総督などはどうなっているのだろう。
その辺の兼ね合いを「罪人と悪い人」ではこれから物語っていきたいと思います。


6


ヘクトリューシャがいう。「芸術はそれがあまりに架空の世界だと、そのいう意味がつたわらずに終わるのではないだろうか」
ピョートル・イアアは「また、はじまった」といった。
イワンはこういう「おもしろいね。現実と違いすぎると意味不明だ。現実と少し違うからああだ、こうだと言える。理屈的根拠が薄すぎると架空の世界を通り過ぎて意味が伝わらない世界だ」
ヘクトリューシャがいう「新鮮な範囲での現実の世界がみたい」
パミラ・ミミトンがいう「こういう、物語はどう?若い金持ちの未亡人が若い下男を怪我させた。未亡人は世間体から怪我の面倒を見る。下男は足元を見て怪我の治り具あいを見計らう。最後まで付き合った未亡人は金の斧をもらいうける。中途半端は銀の斧。さっぱりは銅の斧」
エスーフエルフ・マロマデシャがいった。「おもしろう。おもしろう。すじの理屈が一環としてなくちゃいけないよ。枝葉も芸術的に整ってなけりゃあいけない」
ピョートル・イアアはいった。「それほどでもあります」

7 


ヘクトリューシャがいう。「だからピカソの絵は芸術家の芸術なのよ。創造の世界から抜け出すための世界がピカソの絵なの」
ピョートル・イアアはいう。「文学的ですね。文学小説みたいです」
イワンがいう。「この時代のロシアにピカソの絵が知られているかどうかはともかく、難しい小説みたいだよ」
ピョートル・イアアはいう。「ルサルカ(水霊)はどうなったん・で・す・か」

ソルコリギター・ソリィコギッチの新しいロシアがはじまった。
その日は何かが朝から違った。
目玉焼きの黄身が一つの卵で二つあった。
ロシアの銀行員である彼は、何かが起こるという希望にあふれ、いつもは暗い気分を感じる出発点の玄関を、光のトンネルのように感じ、勇猛果敢にドアを開けた。
彼はいつもの彼だった。しかし、彼の中の彼はあのピカソの絵のように不思議な何かであふれていたのであった。

「罪人と悪い人」第一部完





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