アガメムノン もしくはネクロポリス大戦記 (17)
1
レベルラハムは無意識のうちにモニターに映るアルフレットとウッドデッグの試合をながめながら、カクテルを口に運んでいた。
身につけた宝石が無音でチリカラなる。
「……」
いつしか、忘却の彼方にあった昔の思い出を思い出していた。
それは想像を絶するほどの過去だった。
今いる宇宙など今と違っていた。
宇宙の果てアンシャルとキシャル、そのまた無限の果てラフムとラハム。
マハーラタの実年齢など三億歳をこえるだろう。計量不可能だ。
当時のレベルラハム(マハーラタ)はラフムの妻であった。
風通しの良い、心地よい光の当たる室内。
ナタデココを食べていた彼女はいった。
「ちょっとこのナタデココ甘過ぎない?」
彼女はスプーンを置いた。
「夏バテか」ラハムはそういってみていた。
彼女は終始倦怠感にとりつかれ、その地位の高さにもおののかず、溜息と嘆息が混じりがちの日々を送っていた。要するに彼女は神経が丈夫すぎたのだ。
夫と夫の妹ラハムの創った世界をながめてみて平和だが退屈だと密かに感じた。
(戦争でも起きないか…)
するとたちまち本当に戦闘がおこった。
当時の異世界の大戦。
異世界の長寿の魔人ディアボロス。
宇宙船艦のような魔人だ。
やつは自分の体内が建物のようで、
自分の兵士や民を体内に住まわせている。
文明が巨大な魔人の体内におさめられている。
ラフムとラハムに攻め入らせるな。
エイリアンのような、ダリのよく描く溶けた人間のような頭部。
飛行機と人体の融合した線形なボディ。
一風変わった魔人がラフムとラハムの世界をおびやかす。
あとでたっぷりと後悔したマハーラタだったが、自分が戦争を巻き起こしたは大げさだったかもしれない。
心に呪った罪をほんの少し後悔することになった。
その戦争の災禍はひどく。マハーラタの日常を苦しめるほどだったというわけだ。
その当時の淡い記憶と思い出。
その全部ではないにしろ、感傷を感じる一幕を宝石は記憶していた。
すべての宝石は時間宝石のようにその人をめぐる人生を吸い込み、音楽のアルバムのように結晶にする。
たったいまも、彼とレベルラハムのデートの一景を静かに光る宝石が吸収しているのだった。
滅亡して生まれ変わったのちの彼女がこの宝石を見つけ、過去を思い出し涙するのかもしれなかった。
[Date:古代ローマの手紙で日付の前に発信地を示した。どこどこにて、何日に与えられたと書いたことから。(ジーニアス英和辞典より)][どこで…誰と…]
2
バラモン教典の『バガヴァッド・ギータ―』のように、神々が哲学的論争を争いながら対話するものを描きたかった。
それはお互い、どちらの主張が正しいのかいい争い、クリシュナのような清涼な神たちが空中をたずさえ上る。
剣と剣の勝負。光と光の勝負。
武における戦いと違い、神々の争いや戦争とは哲学的論争なんだよ、というのを。
アルフレットとウッドデックの半神どうしのたたかいはどうなるのやら。
おもえばボードゲームからビデオゲームなど、闘いには種類がある。
素手での拳闘、剣、銃火器などの戦闘、パズルや知恵比べ、なぞなぞなど、ポーカーのようなカードゲームによるバトル。
力比べには数種類あるといえるが、いくらでもでてくるだろうか?
いろいろ集めてみたい。
さて、
アルフレットはもがいてゾンビの軍隊をはじきとばしつづけた。
「がぼ」
ウッドデッグは語る。
「人間生きる上でだ。頭を下げるのはだれしも苦痛なはずだ。だが!頭をあげているだけの奴を見て面白いと思うのは短い間だ。そう思わんか?」
アルフレットの分身の4人はゾンビにもまれながらいった。
「もご、そうだな。わかる。かっこつけてるだけで墓穴を掘りそうなやつにみえるんだろ。バカって自分をわきまえないで空威張りしている」
「フン、そのとおりだ。誰でもだ。頭をあげたまま生きていられるやつはいない。どんな絶対者も力を高めるためには頭を下げる。読書など、相手に頭を下げなければ頭にはいらないものなのだ」
「学者なんかそうだ。専門書なんて権威や著者に頭を下げていないと頭にはいらない。だけど、発明や発見なんて頭をあげていないとできないんだ。音楽でも体育でも先人から学ばないと自分の力がつかない。だが頭を上げないとオリジナルが発揮できない」
「そうだ、剣や武術も師範に頭を下げない奴は身につかない。だが、下げているだけだと自分は取り分が少なくなるのだ。頭の良さそうなやつは頭を下げる相手とあげる相手のバランスがうまい。どうだ、お前も俺の軍門に下りオレにひれ伏すのか?」
「どこで頭を下げてどこで頭を上げるかか!?奈落の肩あてをはずしてあばれるしかないか」
ピカ
「ムッ!?」
トラのぬいぐるみの帽子の男 「わかるきがする。頭下げない奴いきがっていておもしろいけどすぐうまくいかなくなる。スマートなソフトみたいな人間って男でも女でもかっこよく頭さげてうまく頭上げる。なるほど、力身につけるためには頭下げないとないのか。オレも工夫してみる」
アルフレット 「おまえの軍隊の秘密!?生命体を呼び起こすのはできるが、そこまで!半生命体みたいなゾンビにするのがやっとなんだろ」
ウッドデッグ 「ムッ!気づいたか。それがオレの今の力の限度…」
そのときスタジアムの巨大モニターやテレビの前画面にフォールスチャートが映った。
≪試合は中止!どちらの戦士も失格とする…≫
観客たち 「えー」「いや、やらせろ、そのままでいい!」「なんでだよ」「誰だこいつ」
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