12
World planet huger
ワールド・プラネット・ハンガー
閉ざされた世界
47 夜行列車
マルーニア鉄道でひたすら走る列車に揺られた。
新聞を広げる。
さっきまで込んでいたが、かなり空いてきたのでチャンスだった。
ガサゴソいう音に遠慮しながら、めくってみる。
≪我々の惑星アルヘレンはテレポートやタイムスリップに関する理論を放棄して諦めたかの感がある。アルヘレンの主要な科学者は理論の上に構築された理論を砂上の楼閣とあきらめ、技術や工学に転向している。タイムマシンの論理などは確かに魅力的だが、そんなものはあと300年先まで必要ないとの意見も識者からよせられている。タイムマシンやテレポートの技術に関してははるか無理だろう≫
「フン…脂汗ながして耐えていたら、あとちょっとでその破片がでてきたみたいな言い方だぜ。実際そうなのかも。少数派の科学者は諦めていないんだよな…」
マルーニア鉄道はお世辞にも揺れ心地がいいとは言えなかった。
シベリアの…
みたいな寒々とした何かを感じさせる。
夜間も止まらずに走り続ける。
寝台列車などはなく座席で居眠りするよりほかなかった。
一等車両に乗ればあるのだが、三等の切符にはそれはない…
マチルダがアレクセイの留守に気がついた。
「あれ?アレクセイは?昨日から見えませんが」
ハーモット伯爵がいった。
「彼はアルメロンにむかっている。出張だ」
「そうでしたか…彼には期待しております。体を壊さないよう願います」
「うむ。鞄につけるカプセルに強壮剤をいれてわたしたのではないかな」
「そうでした。万が一の気付け薬」
マチルダは古くなった革張りのノートブックをとりだした。
マチルダがくるまえからこの城の引き出しにしまってあった。
前任者の使っていたノートらしい。
いろいろなはしがきやメモランダムをよんでみると、廃墟になったかつての異世界の残骸を夢想してしまう。そいう時代が太古にあってエピソードがあったのだなと。
≪幸せな人がふえたほうがいいじゃないか≫
「この走り書きを読んだとき。私も同感だと思いました」
「うむ。アレクセイの帰還をまとう」
48 死ぬまで成長した売れない詩人
アレクセイはうとうとしたが、寝つかれなかった。
寒さが体の不具合をひきしめてくれる。
体を壊すにはゆとりがあるが…
ここで一杯、酒なんか売店で買ってやったりしたら…
退屈はまぎれるし温かいだろうけど、具合が悪くなるだろう。
辛抱して空腹と疲労にまぎれていた方が安全だ。
無機質な空間とすきま風が健康の微妙なラインを操作している。
そう感じた。
ハンディコンピュータも今はよくない。
アレクセイはいつの間にか考え込んでいた。
無機質な真っ暗の中に明かりが点にみえる景色がこもり歌にきこえてくる。
ガタコトいう揺れと。
死後、本人の死後作品が認められるひとがいる。小説でも絵でも音楽でもなんでもある。
そういうひとは永遠に人間が成長した人なのかもしれない。
だから、永遠に金にならない。死後認められる。
だが、死の間際まで成長し続けたのだ。
成長が止まって大人になると、…作品が売れて、あるいは仕事が手頃なものがみつかって、働いて食っていける。でも!
成長は止まるんだ。
49 マックスとミニマム
アイアンヘルムは新聞を広げていた。
記事に出ている。
≪その妻の夫に対する忠誠心がマックス(最大)のケースとミニマム(最小)の場合にふたりの子が暴走行為に走ることが多い。そのなんとなく中間の忠誠心だと、あまり子が暴走しない≫
バサ…ガザ、
「フン…」
スメルジャコフがいつの間にか部屋にいた。
「とうとう来ますね。アイアンヘルム様…」
「!」
(このスメルジャコフの欠点は…魔術なのか忍術なのか、勝手に部屋に侵入してくることだ。なぜかそれを指摘してやめさせにくいぜ)
「スメルジャコフ。フン。台所に行って料理のでき具合をきいてこい」
「わかりました、アイアンヘルム様」
スメルジャコフはみがるにひるがえして台所へ向かった。
50 大寒(マローズ)
雪どけ日和の午後10時ころ。マルーシア鉄道のその列車は到着した。
オイドクーネン駅に向かって全速で走り、到着した。
アレクセイは荷物を確認して、乗車口からおりた。
駅のホームには手荷物を下げて歩く人がまばらにちらばっている。
売店も寒そうに営業している。
機関車はものすごい出力を休めて汗をかいているという感じでとまってはいるが、未だに危険なエンジンのエネルギーを放出して息をしているという感じがしていた。
機関車のドアから荷物が引っ掛かりそうなほどの客がとっと降りた。
つづいてアレクセイが身軽に降りる。
駅のホーム特有のにぎわいとぬくもり。
見たことのない駅は、さっぱりとした新鮮さだった。
「と、あっちか」
少し歩いてすぐつかまった。
「ようこそいらっしゃいました。アレクセイ?ですよね」
それは柔らかい金髪の天使のような少年と、似たような女の子だった。
「あ、ああ。そうです」
アレクセイは戸惑ったが、温かい歓迎を受け入れることにした。
だが、警戒心をなくすのも危ない。
「今年の大寒(マローズ)は大変でした」
彼はそういう。
女の子の方が、「はじめましてアレクセイ。わたしはケファといいます。こっちはソリトンといいます」
「あははは、ソリトンです。よろしく、荷物をお持ちしますよ」
仲がいいようだけど…二人は恋人どうし?いや兄妹か。自分とマチルダもそうみえるだろうかな?
だいぶ先になってアレクセイとマチルダは生き別れた姉弟ではないが、従姉弟(いとこ)の血縁だとわかった。
ふたりはアイアンヘルムの養子だとは名乗りたがらなかった。
だが、時間の問題でアイアンヘルムがそういうだろう。
改札をとおりぬけ、駅の構内にはいる。
さびれている感じと同時に人々が息づいて商業活動をしている。
0 件のコメント:
コメントを投稿