アガメムノン もしくはネクロポリス大戦記 (8)
1
アルクレオン王子が城下町にひとり歩いていた。
市場で氷菓子が売っているのをみたり、偽物の木でできたおもちゃの刀、砂糖漬けのトマト。ビンにはいったいろいろな木の実。
書店には「月の書」「太陽の書」という大型本のむずかしい錬金術書が高い段にあった。
置いてあるはしごを使って引っ張り出して読む。
記号や文字、みたことのない絵符号などでいっぱいだ。
挿絵も迫力があった。
だが、買うには高すぎた。
この世界にも地球と違う聖書がある。
錬金術所には聖書にない、大自然の力の運行が記されている。
罰あたりでもあるが、未知の力が書かれているという。
「フウ、この値段か…」
歩いていると寝ている飼い犬がハッとおきだして、カフェインにうかされたみたいにさわぎだした。
カンのいい王子は気がついた。
石化を治癒する力があるのなら、眠りを覚ます魔力があって不思議はない。
それが、どうも知らないうちに宿っている。
試してみるとどうやら使える。
だんだんはっきりしてきた。
王子は確信した。
石化治癒以外の魔法、眠りを覚ます術を会得した。
それに気が付き認識すると父王のくしゃみはおさまった。
【目覚めの術】を会得した。
2
王子は街の立札をみつけた。
≪怪物退治。報酬は金貨二枚≫
「王子みずからですかい?」
そういわれたが、つるぎと兜をととのえ、王子は怪物退治にのりだした。
「実は怪物の素性もよくわからないんですがね」
墓地のある枯れ地から怨霊のような声が聞こえてくる。
【古い罪】
朽ちたナイト。
ふたりいる。
「おおおおんんん、かつて戦争の働きにやぶれ、報酬である領地をもらえなかった怨念!!」
「馬上の試合にころばされ、恥をかかされた罪!!」
アルクレオン王子は思った。
(こっこいつら、お爺さんの頃よりまだ前の時代の悪霊だ)
悪霊の騎士は話しかけてくる。その声はこの世とあの世両方から放逐されたかのようにか細い。
「貴様は何と名のる。王家のような兜をかぶるガキよ」
「…アルクレオン三世!この土地はアルクレオンの土地」
「アルクレオン…我れら亡者が生きていたころは…違う国名だった…後継ぎの生きる人間よ。屍となった我らと闘うがいい」
アルクレオンソードを手早く抜くと、王子は構えた。
「ぬん!!」
敵の腐った槍。ダークランスがおそってくる。
一撃目ははじいた。
だが、二撃目を肩にもらった。
服が破ける。
血が出てくる。破傷風とかに感染しそうだった。
「グッ…地の果ての魔王とも対戦したこのわたし…」
ソードが敵に入り込む。
ドシ!
745!
「ファイアーボール」
敵は魔術を使ってきた。
ドンドーンズドーン
火球が降りかかる。
「怨念の魔力!みたか」
星空の兜が吸い取る。
そのスキ。
【破邪のつるぎ】
王子は技を身につけた。
ズン!
2345!
朽ちたナイトは浄化され消えた。
もう一体。
敵のスチルソードは素早い。
もう切れ味はなく、鉄棒でぶっ叩かれたかのように痛い。
「くっくっ、しぶとい」
もう一撃、必殺技を繰り出した。
半分ゴーストの【古い罪】を胴体から真っ二つにした。
「クオオオオオンン」
敵は黒い霧のように消え去った。
ザク
王子は剣を土にさして、膝を折った。
「はあはあはあはあ」
息切れをこらえ、休んでいた。
約束の金貨二枚の報酬は手に入れた。
家に帰るとお怪我を心配され、水薬で消毒して包帯を巻き休んだ。
次の日には全快していた。
「ああ、さあ、本を買いにいくぞ」
3
アルクレオン王子は紙(書物)を通しての錬金術の研究は進んでいった。
フイゴだの炉だの、試験管だのフラスコだの、アマルガムだの。
そういった実地の錬金術は手を染めていないが、紙をとおしてその世界に触れた。
それは見たことのない記号や絵、絵文字であふれていた。
『月の書』『太陽の書』は王子を大いに喜ばせた。
そして魔法陣やその描き方を学び、実行してみたくなった。
「本を読むだけの研究じゃ、いまいちなんというのか研究している気分にならない。実験や実地がないと本当といえないのではないだろうか」
夜中に自室で魔法陣を描いてみることにした。
それは…
イルミネーションのように暗いのに一部だけ明るく光り、鈍い光が隙間から洩れ。
アルクレオン城の一室でひそかにおこなわれた。
調理部屋でもしーんとしずまり、姉のブレアのいびきをかいているだろうか…
王子は魔法陣を描き、呪文を唱える。
奇跡の光景は白黒映画のようにノイズではっきりみえなかった。
異世界とつながっている。
レアな光景ははっきり映るものではない。
「うっ」
王子でも脳にうけつけがたかった。
≪火の精霊サラマンダー≫
ぬいぐるみのようなトカゲが浮かんでいる。
二足歩行でまえ足が人間の手に近い。両手に抱えきれないほど何かをもっているのを感じた。
「魔王をありのまま目撃した僕が…」
ぽーと映るが次の瞬間には消えているかもしれないはかなさ。
≪水の精霊ウンディーネ≫
姉上とおなじ女性だが、成分を抽出して分離すると姉にない成分を含んでいそうな女性だった。全身真っ青で魚に魂がないように感じるように彼女には魂を感じなかった。
≪土の精霊ノーム≫
静かだった。ときが制止しているかのような。耳栓をしているのにか細く声が聞こえるようだ。
小さい。かわいいお爺さんだった。時計やらふくろやら箱やら宝物を抱えているらしかった。王子はそっと触って手にしたい気持ちに駆られた。だが、虫がそうすると逃げるように拒んだ。
≪風の精霊シルフ≫
フェアリーという感じの羽の生えた女の子だった。人間嫌いの感じがする。めったに見られないものを見たという感じ。仲良くなるのは至難の技のようだ。
四つの精霊はアルクレオン王子と契約するという。
「契約?」
王子はそこまで考えてなかった。
サラマンダーがいう。
≪我々が意欲的に契約したいというのはめったにないこと…せっかくの機会を失わないよう…≫
王子はミラクルなスマートフォンをてにいれたかのように、四代元素の精霊と契約を結んだ。
新たな機能と力が王子に備わる!!
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