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World planet huger
ワールド・プラネット・ハンガー
閉ざされた世界
72 バレンタイン
その夜、スメルジャコフがバンジョーをひき、ジプシーの謌を歌った。
「おまえといるとやっぱりいられるぜ」
唱はよかった。
スメルジャコフは「ここは、つまみがうまいな」とガラステーブルの上の皿にもられたつまみを口に入れた。
酒はワインを抜いた。
チョコレートケーキのようなブラウンのスポンジみたいな四角いソファにこしかけ、アレクセイとホビン、スメルジャコフは飲んだ。
スメルジャコフが昔を語り出した。
「オレには兄貴がいたんだ」アレクセイがあいづちを打った。「ああ、それでどうした?」「子供のころな、うちに帰ると兄貴がバレンタインのチョコをたくさんもらって帰ってきていた。オレはいったんだ『兄貴、いいのか、こんなにバレンタインのチョコをもらってきて』ってな」
「それで」ホビンがコップの酒をすすりながらいった。
「二学年上の兄貴だったが、オレたち二個下のクラスなんか女子になめられているんだぞ。兄貴たちだけそんなに違うのかって思った。そのときな」
アレクセイがいった。「それでその兄貴はどうなったんだ」
「死んだ。人の住んでいないあっちの大陸を探検してくるって行ってそのままだ」
「死の大地か!」
惑星アルヘレンの世界は、人が住める大陸が限られている。大部分の大陸はグランドキャニオンのような砂漠やら岩石やらの不毛の荒野や山脈であり、人が住めるどころか、動植物もみあたらない枯れ地である。
隕石が衝突したのは、この話の年から784年前のころだといわれて、今でも陥没した大陸の山に穴があいている。
人のいない大陸にストレートしたのは幸いの偶然だったと言い伝えられる。
「スメルジャコフは結婚はするのか?」アレクセイがきいた。
「バカいえ、…一生独身だ、オレは」
73 それぞれの別れ、解散と新しい旅立ちへ
スメルジャコフはとうとうアイアンヘルムのところに帰った。
コメットもでていくという。
「出発は明日だよ」
「皆巣立っていきますねえ」
マチルダが見送っていった。
「ああ、そうだ、忘れていたんだけど、アレクセイ」
「なんだよ」
「私の故郷フラキルクの貴族にシルヴィア・ツヴァイシュタイン・ルーカスっていう女性がいるんだけど、な…」
そういって手紙をみせた。
アレクセイに渡してくれと頼まれたという。
「本人が?」スピカが不可解な顔をしてきいた。
「ううん、というより彼女のお父さん」
「ああ、お父さん。偉いんだ」スピカが返事をすると、
「うん、そうでもないかも。町も経済がよくないし、街の役人の偉い人みたいな感じかも。よくわからない私」
「フラキルクか」アレクセイはいってみることにした。「それにしても、なんで俺のこと知っているんだ」
「そりゃアレクセイ。ソリトンビジネスでそれなりに有名だからよ」コメットはそういった。
彼女もエクスカリボーからでて出発した。
74 夢の中の女王
「アレクセイ、出発の直前になんですが」
シリアスな表情をしてマチルダがアレクセイに話しかけた。
「なんだよ」
「夢を見たのです…ただの夢なら相談したりしませんが、意味深な夢を」
マチルダのみたという夢はこうだった。
宇宙船艦のような巨大なスペースシャトルがみえた。
その窓から人が見えた。
ちょうど向かい合わせの列車が駅のホームで見えるような感じで。
その女性は女神のような女王のような威厳のある人で、厳しさと優しさを兼ねているようだった。
そのインパクトは強烈だった。
高貴さという点で歴史を感じるほどの。
スペースシャトルは真っ暗で無限のような宇宙の闇に遠のいていった。
「…誰だか分りませんが、わたしはこの人をみると叱られそうな気がして怖いのです」
「別にそういう人は怒ったりしないだろ」
アレクセイは半分無頓着、半分本心から正直にいった。
「ですが…」
その女王のような女性もマチルダをはっきり見ていたという。
75 アレクセイの旅、再び
アレクセイは身支度をととのえた。
銃も装備し、リュックサックに荷物を詰め込んだ。
「じゃいってくる」
「アレクセイも結婚相手を探すのですね。いってらっしゃい」マチルダとスピカは送り出した。
前と同じようにごつい軍事用のようなバスで南に南下する。
「シルヴィア・ツヴァイシュタイン・ルーカスか…」
アレクセイは揺れるバスの中で手紙を読み返した。
確かに自分が招待されている。
バスの揺れは敵度で、体は頑丈に感じてゆとりがある。
この時期は比較的暖かい時期だった。
希望と期待にふくらむ胸が旅を楽にする。
餓死しそうでも、胸が悪くなりそうでもどちらでもない。
ベザス地方をめざしている。
76 宿の女将とのバトル再び
前と同じ宿に泊まった。
横に長いステンレスの洗面台がある。
蛇口がいくつか縦に並び。
近代的ではないが一瞬何かのアートのように古い洗面所。
みなれないホースなどが奇妙についていたりする。
学校の水飲み場はシンプルだろうが、なにか妙なものが取り付けてあった。
そこでアレクセイたちは旅の埃を落とした。
夕食はたいらげられた。
イスに座ってハンディコンピュータをいじっていると、あの女将がぶらついている。
アレクセイは警戒してびくついていた。
フライパンを片手に持っているときアレクセイはイスから立ち上がり警戒をする。
なんどかすれちがったが、あるときスパコンと頭をはたかれた。
「てめえ!」
アレクセイより数倍素早く、ボクシングのシャドーのように鉄拳が目の前にあった。
「フン」
「の野郎…!!」
また、アレクセイの負けだった。
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